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プロ野球、先発完投の価値とは

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菅野智之

 4月28日に行われた巨人対ヤクルト戦で、巨人先発の菅野智之が2安打完封で今季3勝目を挙げた。これで菅野は2勝目となった8日前の阪神戦に続き、9回を投げ切った。開幕から2連敗を喫したものの、昨シーズン、セ・リーグ最多となる6度(4完封)の完投を記録したエースは健在。今年も変わらぬ頼もしい姿を見せた。

■過去と現在の完投への捉え方は
 昨今、各球団の得意な継投パターンを表現する『勝利の方程式』というフレーズが当たり前のように聞かれるようになり、反対に先発ピッチャーのタイプを表す『先発完投型』という言葉は耳にしなくなってきた。

 投手の分業化がより顕著になり、中継ぎ投手の貢献度を評価する「ホールド」が記録として制定されたように、リリーフ投手の役割が細分化されているのが現代のプロ野球だ。試合数も増え、バッティング技術も向上したことから、先発投手が一人で投げ切ることは確実に減ってきている。1シーズンで二桁の完投を記録したのは2013年の金子千尋(オリックス・10完投)が最後となり、リリーフ投手の登板数が70試合を超えることも珍しくなくなった。

 何人の投手を起用しようと、チームの勝利こそが唯一無二の目的であることに変わりはない。だが、先発ピッチャーにとって一試合を投げ切ることの意味は、過去も現在も大きい。ヤクルト戦の試合後インタビューで菅野は「常に完封する気持ちで投げている。一回でも多く投げるつもりでいる」とキッパリ。満面の笑みで力強く語ったその表情は充実感に満ちあふれていた。

■マウンドを守り抜く姿が与える影響も
 同じく巨人の山口俊も4月、2度の完投勝利を果たした。17日のDeNA戦では14個もの三振を奪い、チーム一番乗りの完投で連敗を止めている。巨人は投打がかみ合わず開幕からしばらく黒星が続いていたが、山口、菅野のピッチングでチームが勢いを取り戻し、連勝につながったと言っても過言ではないだろう。チームの完投数4は4月終了時点で12球団最多。また複数の投手が複数回、完投勝利を複数回記録したのも、現時点のセ・リーグで巨人だけだ。

 先発投手が完投すると、もちろん救援陣は休める。それだけではない。テンポ良く試合が進むし、観ている側にも緊張感が伝わり、回を追うごとにファンの熱量は増していく。エース同士の投げ合いであればなおさらだ。

 相手打者に合わせて投手を変える戦術的な継投が毎試合繰り返される今日。しかし、先発ピッチャーが最終回、最後のアウトの瞬間までマウンドに立つ姿を頼もしく感じるのはチームメイト、そしてファンも同じで、やはり特別な眼差しを送ってしまう。そのまばゆい光景がプロ野球の醍醐味の一つであることは間違いない。(佐藤文孝)

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