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不満分子をヤル気にさせた!ヤクルト小川監督は「聞き上手」

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小川淳司監督

 辞める監督、辞めさせられる監督もいれば、続投が決まり、信頼を勝ち得た指揮官もいる。
 東京ヤクルトの小川淳司監督(61)の来季続投が正式に決まったのは9月2日だった。衣笠剛球団社長兼任オーナー代行と会談し、その場で要請されたのだという。
「小川監督は2年契約、契約通りと言えばそれまでですが、当初、『1年でのバトンタッチも十分にあり得る』と目されていました」(ベテラン記者)
 小川監督は再登板である。昨季、球団ワーストの96敗で最下位に沈んだチームを建て直すためだったが、「次期監督と目される宮本慎也ヘッドコーチ、高津臣吾二軍監督にそのままチームを託すのは気の毒」という状況を変える“緊急登板”でもあった。
「良い意味で小川監督の退任を予想する声もありました。フロントは『2年でチーム再建してくれ』という思いで、小川監督の再登板を決めたわけですが、1年でAクラス争いのできるところまで建て直してくれたので、その流れで監督候補の誰かにバトンタッチするのではないかと」(前出・同)

 故障選手の復帰、石山をクローザーにコンバートした投手陣の再整備、山田哲人の復調など勝因はいくつかある。選手が各々の課題に専念しやすい環境を整えたのが“小川采配”だが、チーム関係者は別の面も評価していた。クセ者、バレンティンの扱い方である。
 バレンティンは来日8年目、13年シーズンにはNPB新記録となる「シーズン本塁打数60」を樹立し、今季も38本塁打を放った。故障で15試合しか出場できなかった15年以外の7季全て、30本塁打以上をマークした“優良助っ人”だが、「気まぐれ、集中力が持続しない」といった欠点も指摘されてきた。しかも、練習嫌いである。

 その練習嫌いを逆手に取ったエピソードがある。連日ではないが、試合前の練習中、バレンティンが小川監督のもとに駆け寄り、話し込むときもあるという。 「またいつものサボリだろ!?」と思う関係者もいたが、そうではなかった。
「世間話をしたり、本調子ではない同僚の様子を小川監督に伝えていました」(チーム関係者)
 話はキャンプ中に遡るが、バレンティンがチームメイトを思いやるシーンも見られたそうだ。ヤクルトでは故障で別メニューとなった選手は、自動的に宿舎からの外出が禁止となる。だが、バレンティンは選手の決起集会が企画されている旨を伝え、故障選手の参加も認めてくれと訴えたのだ。
「バレンティンがチームメイトを思いやる一面に驚いていました。その後も相変わらず練習量が多すぎるとか、文句を言ってくる日もありましたが、小川監督は聞き流しています。愚痴の聞き役に徹しているというか」(前出・同)

 小川監督の懐の深さだろう。選手の欠点を指摘するのは簡単だ。しかし、長所を探してやるのも指揮官の仕事である。優しいだけではプロ野球の監督は務まらないが、「チームの勝利」という同じ方向を向いているのなら、それで構わないと決めた。
「キャンプ中から宮本ヘッドコーチに全てを託す場面がありました。試合中の選手起用にしても、時折、宮本ヘッドに任せていました」(前出・同)
 次の指揮官にも実戦経験の機会を与えていたのだろう。プロ野球の監督とは、選手がやりやすい環境を作ることがいちばんのようだ。(スポーツライター・飯山満)

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