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2014年ペナントレース総括 数字で分かるアノ補強とドラフト指名(広島東洋編)

 チーム打率2割7分2厘はリーグ2位、同防御率は3.79で4位。投手陣の成績は決して高くないが、ペナントレース前半戦を牽引したのは、投手陣である。その投手陣が息切れしてしまい、チームも首位再浮上のキーマンを見つけられないままペナントレースが終了した。したがって、2014年のオフは「投手を補強してくる」と思われた。しかし、緒方孝市・新監督(46)が有原航平(日本ハム指名)を抽選で外した後に選択したのは、外野手・野間峻祥(21=中部学院大)だった。走攻守3拍子揃った逸材だが、「野手陣が確実に育っていたので、まさか1位とは…」というのが、他球団の感想である。チーム関係者によれば、ドラフト上位指名候補のVTRを観たとき、緒方監督が惚れ込み、「絶対に指名してほしい!」と唸ったそうだ。

 ヘスス・グスマン内野手(30=前アストロズ)を獲得したのは、本塁打王を獲得したエルドレッドに相手チームのマークが集中した14年シーズンの反省もあったという。
 12月時点で、広島の外国人選手は、エルドレッド(34)、グスマン、ロサリオ(25)、ヒース(29)、フィリップス(28)、新加入の先発タイプの左腕、クリス・ジョンソン(30=ツインズ)、マイク・ザガースキー(31=ブルージェイズ傘下)で、計7人。ロサリオ、ヒース、フィリップスが二軍待機する可能性も考えられるだけに、贅沢な布陣となった。
 だが、クローザーに一抹の不安が残った。ミコライオの退団により、『空席』となってしまった。セットアッパーの中田廉(24)、一岡竜司(23)、ベテランの永川勝浩(34)をコンバートするのか、それとも、米球界では主にセットアッパーで投げていたザガースキーに託すのか、緒方監督は明らかにしていない。残留を表明したエース・前田健太(26=187回)、大瀬良大地(23=151回)を始めとする先発スタッフは“責任イニング”を投げきる能力が高いだけに、クローザーを固定せず、「試合展開を見ながら」という継投も考えられる。ただ、今季は前田が8月以降、2勝5敗と振るわなかった。大瀬良の8月以降の成績は6勝4敗。トータルで見れば、両投手で貯金は『2』しか作れなかった。九里亜蓮(23)、野村祐輔(25)、福井優也(26)は、シーズンを通して負け越している。そう考えると、先発での起用を予定しているジョンソンがキーマンになるのではないだろうか。

 また、前田の将来のメジャー挑戦を考えると、1日も早く大瀬良に次ぐ『先発の柱』が欲しい。ドラフト2位の藪田和樹(22=亜細亜大)だが、「素質は山崎康晃(DeNA1位/同大)よりも上」(在京球団スカウト)の声もあったが、投球は“荒れ馬スタイル”で、プロでは下半身の強化から始めなければならないとの声も多い。また、3位の高校生左腕・塹江敦哉(18=高松北)に対しても、一軍戦力になるまで3年以上掛かるかもしれない。「投球フォームがキレイ」と評するドラフトフリークもいたが、プロのスカウトは「リリーフポイントがバラバラ」(前出・同)と見ており、チーム事情から3年以上の育成期間を掛けられないとして、下位リストにまわした球団も少なくなかった。両新人とも将来性が高い。弱点を補うというより、「3年以上先を見越して、一級品の素材を集めた」というところだろうか。

 今季、會澤翼(26)、石原慶幸(35)、倉義和(39)、白濱裕太(29)がマスクを被った。盗塁阻止率2割2分3厘はリーグワースト。捕手の補強は急務であったはずなのに、補強したのは、ドラフト7位の高校生捕手・多田大輔(18=鳴門渦潮高)、育成1位の松浦耕大(21=MSH医療専門学校)だけだ。ともに強肩であるが、即戦力ではない。だが、同専門学校の片岡新之助監督は元広島バッテリーコーチであり、倉、石原はその薫陶を受けている。松浦は「プロで生き残る捕手とは」を教育されてきた。多田は『4番』も張ってきた。こちらも将来性という補強だった。

 エルドレッドに集中する相手バッテリーのマークを分散することに成功した。しかし、バッテリー部門は弱点を抱えたまま15年シーズンに臨むことになる。野村監督は1位指名で即戦力投手を集めてきた。それが14年の快進撃の礎になったわけだが、緒方体制になって、『育てる』という意味合いがまた強くなってきた。広島は目先の補強よりも、数年後に期待できる補強をしたようだ。

 2014年12月26日未明、黒田博樹(39)が帰還するとの一報が飛び込んできた。「戦力として活躍できるうちに帰還したい」なる言葉からして、年齢を感じさせないピッチングを繰り広げてくれるはずだ。黒田が元気なうちに、『一級品の素材』(=新人)を一人前に育てたい。

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