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2014年ペナントレース総括 数字で分かるアノ補強とドラフト指名(北海道日本ハム編)

 大引啓次内野手(30)が国内FA権を行使した際、こう言い放った。
 「残留ですか…。はっきり申し上げて、限りなく少ないです」
 大引は温厚な好人物である。“移籍組”にも関わらず、チームリーダーに選ばれたように、言葉遣いもソフトで人望も厚い。また、自身の残留交渉に当たった球団スタッフの立場も考えたのだろう。「残留のお話もいただいた」「今季の成績を踏まえた評価も…」と、繰り返し語っていた。そんな大引を「限りなく少ない」とまで言わせた理由は−−。

 この大引発言で2011年オフに海外FA権を行使した二塁手・田中賢介(33)の帰還を直感した取材陣も多い。今でこそだが、大引にとって“気苦労の多いシーズン”だったのではないだろうか。本来のポジションはショートだが、オープン戦では三塁を守らされることが多かった。栗山英樹監督(53)は「1人が複数のポジションを守れるように」の構想であり、納得もしていた。6年目の若手・中島卓也(23)と比較され、現場首脳陣から「残りたければ…」みたいな言われ方をされれば、カチンと来ない方がおかしい。
 三塁、一塁を守る小谷野栄一内野手(34)もFAでオリックスに移籍した。他球団が好条件を提示しても、日本ハムは2度目の残留交渉のアポイントを入れていない。二塁手・田中が帰還すれば、二遊間の両方で使われていた中島を遊撃に専念させ、シーズン途中から外野にまわされた二塁手・西川遥輝(22)は内野に戻さず、三塁は捕手からコンバートした近藤健介(21)を固定させるつもりだったからだろう。
 日本ハムはドラフト会議で「捕手2人、外野手1人、内野手2人」を指名したが、全員、高校生である。大引を退団させた“玉突き事故”も見方を変えれば、野手の育成に自信を持っているというわけだ。

 2014年の日本ハムは、二刀流・大谷翔平(20)の『2ケタ勝利&2ケタ本塁打』がクローズアップされたが、チームの投手部門と打撃部門を別々で見てみると、各々に課題を抱えていることが分かった。
 まず、投手陣だが、チームの勝ち頭が大谷の11勝。二刀流による野手出場の試合があるため、彼のローテーションは変則になりがちだ。7割3分3厘という勝率の高さはさすがだが、大谷に続く先発投手は上沢直之(=8勝)、中村勝(=8勝)、メンドーサ(=7勝)、浦野博司(=7勝)。ドラフト1位で有原航平(22)を指名したのは、ローテーションの柱になるエース候補が欲しかったのだろう。
 だが、左の先発がいない。ベテランの武田勝(36=3勝)は救援に“降格”している。メキシコ、台湾を渡り歩いたベネズエラ出身の投手、ビクター・ガラテ(30=左投左打)を獲得したが、米マイナー時代は「主に救援で登板していた」と聞く。「140キロ台後半を投げる」とも紹介されているが、サイドハンドの変則で、球種は少ないそうだ。有原も右肘に“爆弾”を抱えているとも伝えられるだけに、一抹の不安は残る。昨季、中村は13試合、上沢は18試合に投げているが、ローテーションに入って、100イニング前後を投げたのは、今季が初めてだ。メンドーサは来日1年目、浦和は新人である。そう考えると、「2年続けて」の補償はどこにもない。他球団の監督なら、「今オフ、FA権を行使した金子か、成瀬を獲ってくれ!」とフロントに泣きついていたはずだが、栗山監督を含め、『数年後を見据えて育てる』のチームビジョンは変わらなかったのだろう。

 大谷は契約更改で「投手7割、野手3割」なる15年度の二刀流プランと、「15勝のノルマ」が伝えられたと聞く。有原が出遅れる、もしくは右肘の故障でリハビリに専念させるとなった場合、先発ローテーションの主軸は大谷が務める。2人目の2ケタ勝利投手そうならないことを球団フロントはそういった事態も見越して、『15勝のノルマ』を課したのかもしれない。

 規定打席数に到達した野手のなかで、打率3割を越えた選手はいない。チーム打率2割5分1厘(リーグ4位)で、強力なオリックス打線を凌ぐ593得点(同2位)を稼ぐことができたの“組織力”のおかげだろうか。
 個人能力で言うと、盗塁134個は12球団トップ。首位・ソフトバンク(124個)、2位・オリックス(126個)だから、3位の日本ハムを含め、機動力がなければ“混戦パ・リーグ”を勝ち残れないことが再認識できる。日本ハムは『盗塁』という個人技に、172個の犠打(同2位)を絡めている。だが、リーグ2位の593得点を挙げた要因はこれだけではない。リーグ2位の119本塁打も加わってのことだが、日本ハムは『併殺打』が年間72個と突出して少ないのだ。足の速い選手が多いだけではなく、打者走者は一塁まで全力疾走することが徹底指導されているのだろう。かつ、シングルヒットで、二塁から本塁に帰ってくるということも浸透している。盗塁、犠打、打者走者の全力疾走、二塁からの本塁帰還…。チーム全体で得点を挙げていくチームなのである。

 但し、失策数84はリーグワースト。内野手のミスが目立ったが、盗塁阻止率は3.64でリーグ2位。大野奨太(27)、市川友也(29)の強肩はもっと評価されても良いだろう。2位指名の清水優心捕手(18=九州国際大付高)は強肩で知られている。改めて見直してみると、3位・淺間大基外野手(18=横浜高)、7位・高濱祐仁内野手(18=同)など、ドラフト指名した高校生野手たちは、他球団スカウトも『身体能力の高さ』に一目置いていた。30代の主力選手がFA宣言しても強く慰留に努めない。それは次の若手を使う予定があるからで、「野手が20代半ばから後半でピークを迎える」チーム戦略を立てているようだ。

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