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2014年ペナントレース総括 数字で分かるアノ補強とドラフト指名(DeNA編)

 キューバ選手のユリエスキ・グリエル内野手(30)の残留が決定した直後、中畑清監督(60)はホッと溜息を付き、喜びのコメントを出した。しかし、その後、こうも漏らしている。
 「ダメだったら(グリエル退団)、ケツ(クローザー)を獲ってもらおうと思ったんだ」
 グリエル残留の決定前、前巨人のホセ・ロペス内野手(31)も獲得した。一軍登録できる外国人選手枠『4人』。先発ローテーションを支えたモスコーソ、チーム4位の115安打を放ったバルディリスの残留もすでに決定していたので、外国人選手枠の“最後の1議席”は「グリエルのために空けていた」ようだ。
 『中畑語録』をさらに逆上ってみると、ドラフト会議前日の10月22日、「オレ、口が軽いから〜」と話している。同日、球団事務所で開かれたスカウト会議に呼んでもらえなかったのだ。中畑監督は記者団を笑わそうとしてカミングアウトしたのだが、過去2回も1位指名選手(入札)を知らされたのはドラフト当日だった。

 中畑監督と高田繁GMは『補強ポイント』では合致していたが、その“過程”は微妙に違う。有原航平(22=日本ハム指名)を抽選で外した後、高田GMが切ったカードは、山崎康晃投手(22=亜細亜大)だった。4位で社会人の雄・福地元春投手(24=三菱日立パワーシステムズ)も指名している。
 両投手とも『救援』で頭角を現したドラフト候補だった。2014年、中畑監督はシーズン序盤、クローザーのソーサ(37)を見限り、新人の三上朋也(25)を抜擢した。その三上が“お疲れモード”に入ったシーズン後半、一時的だが国吉佑樹(23)に切り換えた。クローザーの重要性を再認識した中畑監督は「三上1人に任せるのはまだ早い」と思ったのだろう。

 外国人投手のクローザーを口にしたのは『経験値のある完成品』が欲しかったからで、高田GMは数年後も見据え、自前戦力で育てようとしたのではないだろうか。また、中畑監督が“完成品”を欲したのは、本気で優勝を狙っているからだろう。
 山崎の入団交渉時の会見で「先発、救援のどちらでも…」という言い方だった。学生最後のシーズンは先発での登板が多かった。先発でスタートさせ、適性を見極めることになりそうだ。クローザーはチーム最多の65試合に登板し、21セーブ、14ホールドを挙げた三上をメインとし、左腕・福地をセットアッパーに据えると思われる。56試合に登板した林昌範(31)、52試合登板の長田秀一郎(34)、49試合登板の国吉、44試合登板の大原慎司(29)らがブルペン陣を支えた。久保康友(34=12勝)、モスコーソ(31=9勝)、井納翔一(28=11勝)、山口俊(27=8勝)、三浦大輔(40=5勝)の先発スタッフがクローズアップされたが、リリーフ陣の奮闘も大きい。リリーバーの頭数も揃ってきたので、彼らの状況を見極め、三上を休ませて福地で締めるゲームも見られそうだ。
 6年連続リーグワーストだったチーム防御率が3位まで浮上。4.50から3.76まで上がったということは、「1試合で約1失点分」が減ったとも解釈できる。

 だが、課題は残った。
 グリエル(30)、バルディリス(31)、新加入のロペス(31=前巨人)のポジションである。リーグワーストのチーム打率2割5分3厘を改善するには盗塁王・梶谷隆幸(26)、シーズン途中から中堅の定位置を獲得した桑原将志(21)、白崎浩之(24)、プロ5年目で覚醒した筒香嘉智(23)のさらなるレベルアップも必要だが、3人の外国人バッターを揃ってスタメン出場させる必要もある。グリエルは『二塁手』として来日したが、三塁で先発したときの打率は3割5分5厘だが、二塁スタメンだと、2割7分8厘まで落ち込む。三塁手・バルディリスとポジションが重なる点は中畑監督もこぼしていた。シーズン終盤に“テスト”した『一塁・バルディリス』で固定するとしたら、ロペスの使い方が難しくなる。マリナーズ時代、主に二塁を守っていたので、そこに専念させることは可能だ。そうなると、内野陣を牽引してきた石川雄洋(28)が弾き出されてしまう。9月17日の中日戦で『中堅・石川』『右翼・梶谷』のスタメンも見られたが…。

 DeNAはリーグ最多の116失策も記録している。実は、3ケタのエラーをカウントしたのはDeNAだけなのだ。
 一塁・バルディリス、二塁・ロペス、三塁・グリエルという布陣も圧巻ではあるが、チーム最多のエラーをカウントしたのは遊撃手で起用された山崎憲明(27=12個)、白崎(11個)の2人だ。リーグワーストの打撃を解消すれば、内野守備に不安が膨らみ、守備による失点を恐れれば、得点効力が落ちる…。
 「投手が打席に立つセ・リーグでは犠打に関するサインが細かく、それに対応するため、一塁手の守備負担も大きいんですよ。犠打の打球を処理することが多い三塁手と一塁手が外国人選手では、指揮官は胃に穴が開いてしまいますよ(笑)」(在京球団スコアラー)

 高田GMが各メディアに明かした限りでは、グリエルがキューバ国内リーグのプレーオフに進出すれば、3月27日の開幕戦に間に合わない可能性もあるという。ドラフト2位・石田健大(22=法政大)はDeNAが待ち焦がれた左の先発候補だ。しかし、キーマンになるのは倉本寿彦内野手(23=日本新薬)の方かもしれない。遊撃手としての守備能力は高く、「やれ!」と言われれば、三塁、二塁もそつなくこなすだろう。守備固めで重宝されそうだが、オープンの結果次第では、山崎、白崎を押しのけて、『開幕スタメン』の可能性もある。
 守備を固めるか、それとも、得点能力のアップか…。中畑監督は難しい舵取りを課せられたようだ。

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