また、オリックス、楽天と張り合って大引啓次内野手(30=前北海道日本ハム)を獲得した理由も分からなくはない。
ヤクルト打線はチーム打率2割7分9厘と爆発。総安打数1401本は福岡ソフトバンクホークスを凌ぐ。その牽引役と言っていいだろう。4年目の山田哲人(22)が日本人右打者では『シーズン最多記録』となる193安打を放ち、雄平(30)、畠山和洋(32、川端慎吾(27)、バレンティン(30)の計5人が打率3割を越えた。この強力打線は上位チームを最後まで苦しめたが、守備率と失策数で見ると、打線を牽引した彼らは“戦犯”とも言えるのだ。
二塁手・山田は13失策、三塁・川端は14失策、雄平も外野手部門1位タイ(リーグ)となる7失策をマークしており、その汚名を分け合ったのは同僚の上田剛史(26)だった。遊撃手・森岡良介(30)が10失策を記録した。二遊間と中堅手(雄平)の“ザル守備”が、12球団ワーストの投手陣(防御率4.62)の足をさらに引っ張ったわけだ。遊撃の守備力に定評のある大引を獲得した理由は、ここにある。
ドラフト指名した7人のうち、5人が投手だった。社会人、大学生、独立リーグ出身という経歴からして、真中満・新監督(43)を5人とも『即戦力』と期待しているはず。近年のヤクルトは社会人出身の投手が中継ぎで起用され、登板過多になる傾向もある。これも投手の頭数が足らないからだろうが、80年代から主力投手が故障で欠く“負の歴史”を払拭するためにも、新人投手の起用法を見直すべきかもしれない。
成瀬、大引の獲得にともなう人的補填の流出は警戒しなければならないが、相川亮二捕手(38)のFA退団で、移籍先の巨人に対して同様の権利が発生する。投手のさらなる補強が予想されるが、「バレンティンの左アキレス腱の故障は長引きそう」との情報も伝えられている。ひょっとしたら、守備能力の高い外野手を引き抜き、センターラインを強化してくるかもしれない。