今オフ、ポスティングシステムや海外FA権を活用・行使して、メジャーリーグに挑戦すると目される選手は少なくない。球団、首脳陣は戦力ダウンを懸念するが、近年ではファンが挑戦を応援する傾向にある。
「メジャースカウトが(米挑戦の)信憑性を確かめています。彼らの中で、最も時間を費やして調査することとなりそうなのが、菊池と筒香です。菊池の守備力はWBCで証明されていますが、過去、メジャーに挑戦した日本人内野手は厳しいシーズンを経験しました。肩の強さ、日本の人工芝と異なる天然芝のバウンドへの対応などが理由です。菊池の守備力をもう一度冷静に判断したいと思っているメジャースカウトは少なくありません。パワーヒッターの筒香に関しては、バットコントロールの巧さもありますが、クリーンアップを任せられるのかどうか、判断しないと」(米国人ライター)
日本のピッチャーのレベルの高さは米球界も認めている。千賀に関してはポスティングシステム利用を球団が認めるかどうか、3年契約が今季で終了する則本については、「東京五輪に出たい」発言の真意を探る調査になりそうだ。
しかし、日本に派遣されるメジャースカウトの目的は彼らの調査だけではなかった。
ア・リーグ球団のスカウトがこう言う。
「日本の外国人選手も見ておかないと…」
元巨人でセントルイス・カージナルスのマイルズ・マイコラスが今季の開幕投手に指名されたという。カージナルスを追いかけている地元メディアの報道を球団は否定していない。マイコラスは昨季、メジャーリーグに復帰し、18勝4敗、防御率2・83の好成績を収めた。オールスターゲームにも選出され、サイ・ヤング賞(最優秀投手賞)の有力候補にもなった。
18勝を挙げた実力からして、開幕投手に選ばれるのは当然だが、巨人に移籍するまでの彼は、メジャーとマイナーを行き来する“イマイチ”な投手だった。
「落差の大きいカーブが日本の渉外担当者の目に留まったんです。『日本なら通用する』と。自身もマイナーで投げるよりは日本でエース扱いしてもらったほうがいいと思い、巨人入りを決めたんです」(スポーツ紙記者)
巨人に3年在籍し、通算31勝。カーブに自信を持ち、1球ごとの間隔を変え、クイックモーションなどを習得し、メジャーリーグに帰還した。日本のスタイルが自身のレベルアップにつながった外国人投手も少なくないのだ。
「メジャーで伸び悩んでいたコルビー・ルイスが広島で成長し、帰国後、エース級になったのは有名な話」(前出・同)
日本のプロ野球では、公式戦の外国人出場枠は4人まで。5人以上の外国人選手を獲るチームも少なくない。レギュラーを予定して獲得した外国人選手が故障した場合に備えての5人目だが、メジャーで伸び悩んでいた選手が主に多い。そんな5人目の彼らが日本で成長していれば、比較的安い年俸で獲得できる。
メジャースカウトたちは、そういう“お買い得”がいないかも調査するそうだ。大型補強の巨人、外国人投手だけでも5人を抱えるソフトバンクなどが狙われるだろう。
今シーズンは、例年以上にメジャースカウトの視察が増えそうである。(スポーツライター・飯山満)