1983年、春、中学生になったばかりの田尻義博は、不思議なアニメーションを観た。角川映画『幻魔大戦』。光と闇の戦いを壮大なスケールで描いた、平井和正原作、りんたろう・大友克洋コンビが映像化した傑作だ。
不思議な既視感があった。ぼくは、この場面をどこかで観たことがある。それが、どこかは、わからない。しかし、必ず、また、観ることになる。
大学を卒業して、サラリーマンになった。アニマル浜口ジムを経由して、弱小プロレス団体に入った。試合巧者ぶりが認められて、メジャー団体から、オファーが来た。
周りから見れば、とんとん拍子の出世だが、田尻にとっては、夢で見た通りだ。
ぼくは、最初から知っている。名前も変わる。英語に変わる。
2001年、TAJIRIになった。
世界最高峰のプロレス団体、WWEの「スーパースター」になったのだ。そこで、様々な人種のレスラーと交流した。イチローに並ぶ、地球のメジャーになっていった。2006年、日本に帰り、ハッスルで、新しいエンターテイメントを模索し始める。
そして、2010年3月26日。あれから27年。自らがプロデュースする初めての団体、SMASHのオープニングに流れたのは、幻魔大戦のテーマ『地球を護る者』だった。
プロレスは、光と闇の戦いだ。内と外との。気づいてみれば、世界各国から、メンバーは集まってきた。
「北欧の神」スターバックは、神「フロイ」(アニメでは、美輪明宏が声)とも、幻魔ともとれる。プリンセス・ルナは、ヒロイン、朱里か。カンフー娘、タオ(原田知世)は、香港から来たリン・バイロン。サイボーグ戦士ベガは、皆をサポートするAKIRAであってほしい。
主人公であり、若き救世主、東丈(あずまじょう)は、やがてWWEに行くKUSHIDAなのか、それともTAJIRI自身かもしれない。美熟女レスラー、KAORUは、東丈の姉、三千子のように優しい。
11月22日の『SMASH.10』は、初のJCBホールで、幻魔大戦が繰り広げられた。
TAJIRIの夢。
(わくわく探偵リーラ 山口敏太郎事務所)
参照 山口敏太郎公式ブログ「妖怪王」
http://blog.goo.ne.jp/youkaiou