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書評「警視庁捜査一課長 特捜本部事件簿」田宮榮一著、角川書店

 犯罪捜査のご意見番でおなじみの著者が、捜査の裏側を語る。特に捜査一課長という役職柄、付きまとう記者らとの駆け引きは痛快だ。

 「ホテル・ニュージャパン火災事件」で経営陣の刑事責任を問う捜査が大詰めを迎えていた昭和57年11月。官舎には毎晩、記者らが夜討ちに詰めかけていた。記者に与えられた取材時間は各社5分。

 寒空のもと訪れた記者たちに、著者はとん汁を振る舞うという奇策にでる。フウフウと吹きながらうまそうに食べた記者らは、ほとんど話を聞けずに持ち時間を終えた。
 横井英樹社長らが一斉に逮捕されたのはその翌朝。朝刊で「今日、逮捕」と予告できた新聞はなし。著者の策略がまんまとはまった瞬間だった。(税別1470円)

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