外務省から今年10月19日から開催されるU−23野球ワールドカップに関する通達があった。「レベル1」(首都マナグア市のみ。他はレベル2)。これを受けて、NPBは“最悪の事態”も想定しなければならなくなった。
「大会主催地のニカラグアは政情不安で危険だというのです。レベル1なので、渡航禁止ではありませんが、『十分に気をつけてください』とNPBサイドに通達がされました」
関係者の一人がそう言う。
そのことは現場を預かる稲葉監督にも報告された。外務省からのお達しがあったのは先月末とのことだが、稲葉監督に伝える前、NPBは対応策をいったん話し合ったという。
「現地入りする選手、スタッフのことも考えれば、出場を見送るのがベスト。でも、大会運営側からすると、日本の棄権は最悪の結論ということになります」(前出・同)
はっきり言って、大会は野球人気の高い日本がいなければ成り立たない。また、日本企業の協賛をアテにされた部分もなくはない。
主催側も政情不安に関しては協議を進めている。だが、こんな情報も交錯している。
「延期、開催地を変更するとの案も聞かれました。延期となった場合、10月下旬の日本シリーズと完全にかぶってしまいます」(同)
日程がかぶるというのは、けっこうダメージが大きい。
単に開催日を変更するだけならいい。しかし、開催地まで変更するとなれば、国際試合が成り立つハイテク・スタジアムをいくつも所有している日本が代替地になるのは必至。日本シリーズの“裏番組”みたいに、U−23を開催することはできない。しかも、日本シリーズとなれば、いくら「23歳以下」の宣言があるとはいえ、シリーズにコマを進めたチームは絶対に選手を派遣しない。「二軍選手が中心となって」となった場合、海外チームも良くは思わないだろう。
「この大会はプロアマ混合チームで臨む予定でした。ただ、社会人、大学もこの時期は日本選手権や秋季リーグ戦があるんです。アマチュアチームに理解を求めるだけでも実は大変だったんですよね」(アマチュア野球要人)
そういう話を聞かされると、相手側に「最悪」と思われても、出場辞退となるのではないだろうか。稲葉監督は一部メディアの直撃を受け、若い選手に国際舞台の経験を積ませてあげたいと話していたが、「安全が一番大事」と吐露していた。心境は複雑だ。
「11月9日から日米野球が開催されます。NPBはこのイベントに大きな期待を寄せています」(ベテラン記者)
11月まで延期となれば、U−23大会と日米野球がバッティングする恐れもある。このまま「日本は辞退」と決まった場合、稲葉監督が会見しなければ、ファンも納得しないだろう。そんな役回りではあるが、背広組の幹部職員よりも説得力はある。「国際大会での経験を積み、東京五輪へ」の青写真は崩れつつあるようだ。(スポーツライター・飯山満)