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森永卓郎の「経済“千夜一夜"物語」 ★消費増税で転落する日本経済

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提供:週刊実話

 消費税率が10月1日から引き上げられた。私は、安倍政権にとって致命的な政策ミスになると思う。タイミングが最悪だからだ。

 商業販売額は、8月まで9カ月連続の前年比マイナスになっている。消費を節約しているというより、所得が伸びていないからだ。実質賃金指数は7月まで7カ月連続の前年比マイナスになっており、特に7月は前年比マイナス1.7%と大幅な減少となった。

 景気全体を表す景気動向指数も3月に「悪化」となって以降、最近3カ月は、「下げ止まり」の判断となっているが、一向に回復の兆候がみられない。

 そうした中、安倍政権が成果を強調してきた雇用にも悪化の兆候が出始めた。昨年3月以来1.6倍台だった有効求人倍率が、7月に1・59に下がった。主な原因は、求人が減っていることだ。特に正社員の求人が減っている。空前の売り手市場と言われた新卒者も、2020年卒の大卒求人倍率は1・83倍と、前年の1・88倍から低下している。

 景気後退は、日本だけの話ではない。米国連邦準備理事会(FRB)は9月18日の公開市場委員会で政策金利を0・25%引き下げた。利下げは、7月に続いて2度目だ。欧州中央銀行も9月12日の理事会で金利を0.1%引き下げ、3年半ぶりに金融緩和に踏み切った。利下げが行われるのは景気が悪いからだ。

 リーマンショックのあと、世界経済は翌年から5年間にわたる景気低迷を経験した。そのときの平均成長率は3.3%だった。しかし、今年の世界経済成長率は、世界銀行の予測で2.6%、OECD(経済協力開発機構)の予測で2.9%と、その時よりも悪くなっている。安倍総理は、消費税率の引き上げに関して、「リーマンショック並みの危機が来なければ」という留保条件をつけてきた。しかし、いま経済は、リーマンショック並みの危機に立たされているのだ。

 その意味で、今回の消費税率の引き上げは、日本経済に致命的な打撃を与えるとみてよいだろう。

 2014年の消費税増税時は、あらゆる景気指標は改善していたが、それでも増税をきっかけにマイナス成長に陥った。今回は景気後退局面で同じことをやるのだから、日本経済が失速するのは自明だろう。これから、日本経済がデフレの悪夢に戻ってしまうことは、ほぼ確実だと思われる。

 私は、安倍政権が対米全面服従、弱肉強食路線を採るなかでも、金融緩和に踏み切るという果断なマクロ経済政策を採用したことを評価してきた。それによって、労働市場が劇的に改善したからだ。私は、大学で学生に教えていて、彼らの就職相談にも乗っているので、安倍政権以前と以後で、就職環境が劇的に変わったことを、身をもって経験している。それまで、いくら企業訪問を重ねても内定が取れなかった学生たちが、いとも簡単に、しかも良質な企業に就職できるようになった。新卒時にきちんとした職を得られるかどうかは、彼らの人生を大きく左右する。しかし、いまその環境が奪われようとしているのだ。

 それにもかかわらずメディアは、消費税の増税に関して、増税対策のお得情報を流すことに終始してきた。増税反対の運動が、ニュースで流れることもなかった。自分への反省を含めて再度言う。増税は致命的な失策だ。

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