事件から2週間以上たったが、相変わらず事件は謎だらけだ。
被害者は恵庭市の会社員・Aさん(62)。事件当日、家族には行き先を告げないまま札幌市内で行なわれたディスコイベントに参加。レディ・ガガ風の仮装をして、下はスカートという女装をして踊っていたという。その後、容疑者と合流し、現場となったホテルに向かったと思われる。
ホテルに入って3時間後、2人が入った部屋から「先に出ます」という“女性のような”声で連絡が入り、容疑者が先にホテルを出て、チェックアウトの時間が来ても退室しないのを不審に思った従業員が確認に行くと。Aさんの首なし死体が浴室にあった。
しかしAさんの荷物は何一つ残っていなかったのだ。当初警察は、遺体にある指紋と被害者の死体しか手掛かりはなかった。警察は被害者の身元を突き止めるのに2日かかっている。
身元がわかったのは、被害者の妻から行方不明届が出され、自宅の指紋と遺体の指紋が一致したからだ。
ただよほど証拠が少ないのか、ホテルは数日かけて鑑識が捜査をしている。
また、警察は防犯カメラのリレーで容疑者を追うも見失ってしまう。これは警察のミスではなく、容疑者が逃げた方向は防犯カメラが少ない地域だったからだ。もし容疑者がそのことを知っていたとすれば、土地勘がある人物かも知れない。
警察は防犯カメラに写っている映像を公表するなどの、公開捜査を行っていない。これは公開するような、鮮明な映像が残っていないからかも知れない。警察はいま、タクシー会社のドライブレコーダーを調べているという。
被害者の遺体に、防御創(身を守るための傷)がなかったことから、犯人はAさんが安心できるほど、親しい間柄ではないかと考えられている。
Aさんの趣味は女装で、容疑者は“女性のような声” であったことから2人は同好の士や恋人である可能性は否定できない。ただ容疑者はいまだ男性か女性か、知り合いか初対面かはわかっていない。
心理学的には首すなわち人間の顔というのは、その人のシンボルであり、戦国時代だと「戦利品」である。
容疑者は被害者を激しい憎しみゆえに首を持ち帰ったのだろうか? それとも愛するあまり持ち帰ったのだろうか?
もう一つの謎は、犯行時間わずかに3時間。その間にAさんを浴室で殺し首を落として、浴室の血痕を洗い流して、スーツケースに首やAさんの持ち物をすべて入れ、証拠を消してホテルを出ていった。初めての殺人にしては手際が良すぎる。まるで手慣れたプロのような仕事をしている。
当初数日で解決かと思われたこの事件はいまだ謎だらけだ。
プロフィール
巨椋修(おぐらおさむ)
作家、漫画家。22歳で漫画家デビュー、35歳で作家デビュー、42歳で映画監督。社会問題、歴史、宗教、政治、経済についての執筆が多い。
2004年、富山大学講師。 2008~2009年、JR東海新幹線女性運転士・車掌の護身術講師。陽明門護身拳法5段。