こうした間接的なケースではなく、かつては直接政治への進出を目論んだ宗教団体が存在する。それがオウム真理教だ。
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1990年2月に行われた衆議院議員選挙に、真理党から25名が出馬する。真理党はオウム真理教の麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚(2018年に死刑執行)が党首となり、麻原元死刑囚も東京都の渋谷区、中野区、杉並区を選挙区とする当時の東京4区から出馬した。
選挙戦では、麻原元死刑囚を模した巨大なお面が配られたほか、女性信者によるダンスパフォーマンスなどが行われた。「ショーコー、ショーコー」と名前を連呼する「尊師マーチ」のインパクトもよく知られている。
真理党が選挙公約に掲げたのは、前年に導入された「消費税廃止」のほか「医療改革」「教育改革」「福祉推進」「国民投票制度導入の構想」といったもの。主張としてはきわめてオーソドックスなもので、宗教色は薄い。実際、真理党は国民に広くメッセージを訴えようとしていた側面があり、オウムは本気で政界進出を狙っていたと言えるだろう。
麻原元死刑囚は自身がトップ当選すると思っていたようだが、結果は1783票にとどまり落選してしまう。ほかの候補者も軒並み惨敗の結果に。各候補者の擁立に掛かった約5000万円の供託金は全て没収となった。麻原元死刑囚の選挙区には信者の住民票を1つの住居に100名以上集めるなど、かなり力を入れていた様子も窺える。
その後、オウム側は「機械による票のすり替えがあった」といった陰謀論を主張するように。これがオウムが過激化していくきっかけとなったとも言われており、宗教と政治の関わりを考える上で象徴的なトピックだろう。