先場所の5月場所(同月8〜22日)は中日を終え「5勝3敗」と低調だった横綱・照ノ富士が、翌9日目から千秋楽まで全勝し「12勝3敗」で優勝。その横綱を中心に多くの熱戦が繰り広げられたが、中には勝敗以外の部分が思わぬ形で物議を醸した取組もあった。
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初日の大関・御嶽海対平幕・高安戦では、行司・式守伊之助が起こした取組中のアクシデントが物議を醸した。立ち合いから積極的に圧力をかける高安に対し、御嶽海は防戦の途中で少し体を引いてしまう。これを見た高安から押しを見舞われ万事休すと思われた直後、御嶽海の後方で取組を裁いていた伊之助が押された御嶽海とぶつかり、吹き飛ばされるように土俵下に転落した。
場内からは「あぁ~」とどよめきが上がる中、御嶽海は体を入れ替え逆に高安を土俵際に追い込むと、最後は土俵下へ押し出し逆転勝利。伊之助の衝突を機に戦況が一変したということもあり、ネット上には「取組結果を狂わせるあり得ない失態」と批判が相次いだ。
8日目の大関・正代対小結・豊昇龍戦では、敗れた豊昇龍の態度が問題となった。豊昇龍は立ち合いから正代に押され苦戦するも、土俵際に追い込まれたところで投げを合わせ、両者はほぼ同時に地面に落下。これを見た行司は正代に軍配を上げ物言いもつかなかった。
すると、豊昇龍は正代勝利の判定が不服だったのか、取組後の一礼の場面で、首をわずかに傾けただけで終え土俵を降りる。豊昇龍は2021年9月場所4日目の大関・貴景勝戦で一礼をせず行司に注意された過去もあることから、態度面が成長していないと呆れるファンは少なくなかった。
12日目の平幕・翔猿対平幕・王鵬戦では、両名が演じた“けんか相撲”に場内・ネット上がざわついた。王鵬は立ち合いもろ手突きから、翔猿の顔面を押すように何度も突っ張る。しかし、翔猿も王鵬の突っ張りを下からあてがいつつ、王鵬の顔面に頭突きするように頭をつけ懐に入ろうとする動きを繰り返して応戦した。
激しい取り口に場内から幾度となくどよめきが上がった一番は、土俵際に追い込まれたところから体勢低く押し返した翔猿が逆に王鵬を押し出し決着。ファンの間からはお互いに気迫十分だった両者を称賛する声の一方で、故障リスクが高すぎると指摘するコメントも散見された。
勝敗以外の部分が思わぬ物議を醸したこの3番。中でも御嶽海戦は行司が勝負に水を差すという最悪の内容だったが、1週間後の7月場所ではこのような取組が出ないことを願うばかりだ。
文 / 柴田雅人