1978(昭和53)年3月、大阪府のある中学校で、お昼の弁当を食べた中学生10人ほどが放課後に突然嘔吐し、苦しみ始めるという事件があった。
3月というまだ肌寒い気候で、食中毒の可能性は低く、また嘔吐する生徒が出たのも1クラスだけ。「意図的に誰かが何かを入れたのではないか」という考えになるのは当然だった。
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やがて、理科室から薬品を持ち出したとみられる生徒4名が捕まった。
彼らは化学部の部員で、部活動の最中に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を盗んでいたことが明らかになっていた。
彼らは苛性ソーダを盗んだ理由について、「不良グループに仕返しするため」と述べた。犯人の化学部員たちは今で言う「オタク」であり、常日頃から不良グループに目をつけられていた。
その仕返しのため、彼らは復讐を決意。だが、ナイフで刺すと殺人につながり、また犯人と特定されるのは危険だと考え、食べ物や飲み物に毒物を入れることにした。
彼らは化学部の活動中に苛性ソーダを盗み、クラスの昼食時にお茶の入ったヤカンに苛性ソーダを入れた。
だが、苛性ソーダの入ったお茶は異様な臭気を放ち「今日のお茶なんか変だぞ」「腐っているのでは」と生徒のほとんどがお茶に違和感を覚えた。
結局、飲んだ生徒のうち10人が放課後に嘔吐した。この10人の中には復讐したい不良グループは入っていなかったため「苛性ソーダは直接飲ませないとダメだ」と作戦変更。翌日、化学部たちは不良グループたちの弁当に苛性ソーダの粒を混入させることに成功した。
ひとりは見慣れない苛性ソーダの粒を見て「なんだこれ?」と食べたところ舌に強い刺激を受け、思わず吐き出した。しばらくして化学部が苛性ソーダを盗んでいたことが分かり、部員4人は警察に連行された。
4人は当初「不良グループへの復讐」を理由に動いていたことは確かだが、クラス全員のお茶に毒を入れたことに関しては「やりすぎだった」「興味があってやってしまった」と反省。彼らの悪い好奇心が事件を引き起こしたものとされた。