1975(昭和50)年、なんとも壮大な未成年者による「殺人未遂事件」が発生した。
この年の冬、兵庫県のある町で中学教師が住んでいる寮に戻ると、部屋の中がガスで充満していた。驚いた教師は外に飛び出し管理人や警察へ伝えたために爆発せずに済んだが、一歩間違えたら大事故になった可能性があった。
当初はガスの元栓の締め忘れと思われたが、実際は違った。なんと何者かが教師の家に侵入しガスを充満させた可能性が浮上してきたのだ。現に教師の自宅には、本来なかったはずのプロパンガスコンロがテーブルに置かれていた。ガスはこのコンロから漏れており、さらにドアノブにはタコ糸が不自然に絡まっていた。
ドアノブのタコ糸をたどっていくと、「犯人」が設置した乾電池を使った手製の着火装置につながっており、ドアを開けると着火装置から火花が出て、ガスに点火する仕掛けになっていたようだった。
幸いにも、着火装置は不発だったが、もし思惑通りに着火装置が作動していれば、ガス爆発が発生し教師は殺されていた可能性が高い。
果たして犯人は誰なのか……。警察が着火装置を調べたところ、爆弾の製造に詳しい人ではないことが分かったため、警察は「教師に恨みを抱いている生徒ではないか?」と推理した。
そして事件翌日「仕掛けを作ったのは自分である」と名乗る中学生が自首してきた。
この中学生は、教師が顧問を務めるバレー部の生徒であった。もともと、この教師は「熱血指導」で知られており、この生徒は普段から人前でしかり飛ばすこの教師が嫌いでいつの間にか殺意を持ってしまったという。
そして、生徒は教師を殺すため部屋に上がり込み、見よう見まねで作った着火装置を設置し殺害を企てたという。
非力な中学生も殺意を持てば、工作でも人を殺す可能性がある……当時の大人はこの報道に震え上がったという。