>>日本ハム・斎藤佑樹の気丈さに球界OBが涙?「佑ちゃん見てる人は誰もいなかった」春季キャンプでの裏話に驚きの声<<
本拠地・札幌ドームがその舞台とされるのは当然だが、演出は「難しい」と思われた。対戦相手であるオリックスは優勝争いの真っ只中で、引退選手に花を持たせるようなお付き合いはできない。
と言うか、セレモニーのために一軍昇格させた投手をマウンドに送り込むこと自体、失礼になる。「先発させ、打者1人で交代させるのかも?」とも予想されていたが、予告先発は別投手だったので、それもない。栗山英樹監督が斎藤の花道をどう演出するのか、注目が集まっていた。
オリックス関係者がこんな話をしてくれた。
「試合前、日本ハムの職員が見えて、『普通に(試合を)やってくれ』と伝えられました。栗山監督も同様の話をされていました」
7回表、斎藤がコールされ、打者一人と対戦した。四球を出したところで日本ハムナインが集まった。「打者一人にしか投げない」と決めていたようだが、近年では間違いなく、“ベストピッチング”であると思った。二軍球場・鎌ケ谷で投げた今月3日も見たが、その時は右肩が回らず、
「本当に辛かったんだな…」
と見ている側にも痛みが伝わってくるような投げ方だった。しかし、17日はスムーズに肩も稼働しており、相当な準備をしてきたのが分かった。
引退セレモニーに合わせて調整するのも異例だが、試合後の会見でも「他の選手なら質問されない内容」もあった。
夏の甲子園大会の話題にも触れられた。「同世代」「仲間」「当時の」とオブラートに包んだ聞き方だったが、プロの引退会見で“高校時代”の質問が出るのは、異例中の異例だ。田中将大擁する駒大苫小牧との決勝戦が延長15回で決着がつかず、引き分け再試合に。その一戦は本当に印象深いものだったが、斎藤は当時のフィーバーぶりについて、こう答えていた。
「やっぱり、イヤでした。あの頃は生きているのも必死でしたから」
これは、10月1日に出たもの。「生きているのも」とは…。何を指してそういう言い方をしたのかは明かさなかったが、夏の甲子園大会のことを何度も聞かれ、ウンザリしていたのかもしれない。
「引退後に何をするのかは、答えませんでしたね。『相談してから決める』と言いましたが、斎藤は『こうした方が良い』とか、誰かに勧められて決めるのは嫌いなんです。意見は聞くけど、参考程度といった感じ。悩んで、最終的には自分で決めるタイプです」
日本ハムOBのプロ野球解説者がそう言う。
また、球団は記念グッズを発売した。その中にはハンカチもあった。
斎藤はハンカチで顔の汗を拭うポーズも撮らせたが、先の夏の甲子園大会以降、ハンカチ・ポーズに応じたのは初めてではないだろうか。これまで、メディア、プロ野球解説者がお願いしてきたが、頑なに拒否してきた。しかし、その日は笑顔まで見せてくれた。引退したことで、夏の甲子園大会の呪縛からも解き放たれたということだろうか。メディアへの転身が噂されているが、学生野球の指導者も悪くないのでは。(スポーツライター・飯山満)