このピンチに三浦大輔監督が指名したのが22歳の山本祐大。
中学までは捕手。京都翔英高では外野手として甲子園出場を経験したが、プロになるために大学へ進まず、あえてBCリーグに加入したばかりの滋賀ユナイテッドベースボールクラブに中途入団。捕手にポジションを戻し打率.294、盗塁阻止率.448の好成績を残すと、オフにベイスターズに9位指名された異例の経歴を持つ。
昨年は三浦監督の元、ファームで主戦としてマスクを被り、.619と驚異の阻止率をマーク。今シーズンは開幕一軍の座もゲットしたが、4月24日に2打席凡退すると打率は1割に満たない成績に、翌日には高城俊人と入れ替わりでファームに落ちた。しかし横須賀で鍛錬を積み、6月22日に再登録されると、伊藤のアクシデント後からスタメン起用され、甲子園では6年ぶりとなる3連勝の陰のヒーローとなった。
特に土日のゲームでは、山本と同じく開幕一軍キップを手にしながら、右肘の違和感で離脱していた阪口皓亮と、極度の不振に陥った大貫晋一のファーム調整組を引っ張って勝利に導くことができた意味は大きい。土曜日の阪口はMAX150キロ、平均でも147キロのストレートとスライダーを軸に、110キロのカーブも有効に投げ、自己最長の6イニングを1失点の快投。山本はバットでも猛打賞と気を吐いた。日曜は防御率7点台と苦しんでいた大貫に、MAX148キロのストレートで強気に押すリードで腕を振らせ、スライダー、スプリットのコンビネーションで4月6日以来の勝利をアシストした。
ここまで決して順調に進まなかった2021シーズンだが、伸び盛りの若武者はチームのピンチをチャンスに変え、正捕手の座を一気に狙っていく。
写真・文 / 萩原孝弘