左肘の故障で2019年8月15日にトミージョン手術を敢行したが、昨年末には「今まで通りの感覚で投げていると、痛みや強い張りが出てしまう。張りが強くなるとリハビリの途中のようにノースローになってしまうので、それだけは避けないと」と苦しみを明かし、「感覚を変えないと投げられないので、苦労しています」と素直な心境も吐露。紆余曲折ありながらも、2018年9月16日以来の実戦登板にたどり着いた。
結果は10球を投じ、1イニングを無失点。「めちゃくちゃ緊張して、めちゃくちゃフワフワしていた」と振り返るマウンドは、最初のバッター愛斗に対し、初球から代名詞でもある113キロの縦の大きなカーブでストライクを取り、追い込んでからも再び98キロのカーブで空振り三振を奪う。続く呉念庭にセンター前ヒットを許すも、長谷川信哉を129キロスライダーでセカンドゴロに打ち取り、ダブルプレーが完成しお役御免。ストレートの最速は139キロながら、落ち着いたマウンド捌きを見せ、復帰戦としては上々の内容だった。
今年32歳を迎える田中は「そんなに僕には時間が無いので、来年何がなんでも復帰したい」と年末に不退転の決意を表明。「一日でも早く、3月のオープン戦からをめざしてやって行きたい」との目標を口にしていたが、ファームながらも3月中に一歩目を踏み出せたことは大きい。
慢性的なリリーフ左腕不足に陥っているベイスターズ。今シーズンは毎年フル回転しているエドウィン・エスコバーは、コロナの影響で開幕不在。石田健大や砂田毅樹、ルーキーの池谷蒼大らでブルペンを守っていく公算だけに、田中が完全復活すれば大きな助けとなる。現在の背番号046から、0が取れる日を、チームもファンも待ち侘びている。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘