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大ヒットの『鬼滅の刃』、子どもたちに与える影響は? 心の成長とトラウマにも懸念

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 国内にとどまらず、海外からも多くの熱狂的なファンを獲得している人気漫画『鬼滅の刃』。16日から公開されている劇場版アニメ『鬼滅の刃 無限列車編』は、3日間で342万人以上を集客し、46億円を超える記録的な興行収入を得ている。

 SNSでは「良かった!」「感動した」といった肯定的な感想が多く、アニメ映画作品としてのクオリティの高さが絶賛されている。
 しかし、作中にたびたび登場するグロテスクな描写について、「結構グロいけど子どもは大丈夫?」と心理的な影響を心配する声や、実際にショッキングなシーンで「泣き出してしまった子どもがいた」という声もある。映画倫理機構(映倫)が定めた本作の区分は「PG12」であり、特に年齢制限はないものの、「12歳未満の観覧は保護者の助言・指導が必要」とされている。

 ​>>『鬼滅の刃』ブームの裏で「#キメハラ」が話題に「苦手なのに世の中どこ行っても鬼滅」の声<<​​​

 『鬼滅の刃』は、大人も楽しめる深いストーリー性を持つにもかかわらず、小学生はもちろん、未就学児ほどの低年齢層からも高い人気があることで知られている。ストーリーやキャラクターの詳細を把握していなくても、魅力的なキャラクターに惹かれたり、親やきょうだい、友人などが好んで見ていることに影響されて興味を惹かれ、愛着を持っている場合もあるようだ。

 しかし『鬼滅の刃』は、映画版に限らず、作中で鬼が人を無残に食い荒らしたり、鬼の首をはねるなどのショッキングな描写がたびたび登場する。グロテスクなシーンやショッキングな映像を見た子どもに実際どんな影響があるのか。こうしたテーマについては、実際に子どもたちにショッキングな映像を見せて実験することに倫理的な問題があるため、因果関係をはっきりとさせるようなデータはない。だが、大人でもハッとするようなショッキングな描写を、ただでさえ迫力のある映画館の大画面で見れば、少なからずトラウマ(心的外傷)を負ってしまう可能性は否めないだろう。

 トラウマといえば、その原因になった事柄や、それに似た事柄を再体験することによってショック反応を引き起こすというイメージが一般的にある。だが実際の反応はそれだけにとどまらず、様々な形で間接的に表れることもある。
 変化が表れるタイミングや期間には個人差があるが、身体的、精神的な症状が出てくる。例えば、不眠、食欲不振、頭痛、便秘や下痢などの身体症状。悪夢を見る、怒りっぽくなる、情緒不安定になる、映像がフラッシュバック(再体験)して怯える、集中力が低下するなどの精神症状。繰り返しそのシーンについて話す、赤ちゃん返りなどの退行現象、体がこわばる、無口になる、表情が乏しくなるといった行動や様子に表れることもある。

 トラウマ体験後に表れるこれらの変化やサインは、おおむね5歳から小学生までの子どもに当てはまるもので、1カ月以上続けばPTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断され、専門的なケアが必要になる場合もある。たとえささいな反応でも、観賞後にショックによる影響とみられる変化があった場合は、保護者による十分なスキンシップや傾聴、安心感を与える言葉掛けなどのフォローが必要だ。

 とはいえ、『鬼滅の刃』が子どもたちに与える影響は悪いものばかりではない。
 子どもたちは純粋であるほど憧れのキャラクターに影響されやすく、その言動や行動、思想を観察学習(モデリング)し、意識的にも無意識的にも、自分の中に取り込んでいこうとする傾向がある。

 例えば本作の主人公・竈門炭治郎が、初めは弱くても努力を重ねて成長していくひたむきな姿や、敵役の背景をも案じる情の深さ、家族や仲間を大切に思う気持ちなど、倫理観を養うために好ましい要素も多くある。また、弱音や自分を鼓舞する言葉など、今の心理状態をその都度セリフとして具体的に表現されていることが多いため、キャラクターの心情をくみ取りやすく、感情移入しやすいという特徴がある。キャラクターとの一体感が高くなるほどその思想や考え方の影響力は強くなり、自分の考え方に取り入れやすくなるため、倫理観や正義感の育成に対するポジティブな影響が期待できる。

 『鬼滅の刃』は多くの人々を惹きつけてやまない魅力的な作品である。しかし、子どもたちの鑑賞には注意が必要といえそうだ。

文:心理カウンセラー  吉田明日香

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