注目が集まったのは、「4-3」と楽天1点リードの5回裏無死二塁で飛び出たプレー。楽天2番手のD.J.ジョンソンは打席のソフトバンク・柳田悠岐を一ゴロに打ち取るが、スイング時に折れたバットが回転しながら一、二塁間へ飛んでいく。飛んでくるバットを見た二塁手・浅村栄斗は後方に下がり回避したが、動かないままなら直撃していてもおかしくない軌道だった。
折れたバットがノーバウンドで浅村の付近まで飛んでいったこのプレーを受け、ネット上には「折れたのにあそこまで飛ぶって柳田怪力過ぎる」、「二塁の守備位置まで飛ぶのはなかなか珍しいぞ」と驚きの反応が多数寄せられた。一方、一部では「もし当たってたら確実に大惨事だったな」、「二塁に飛んだからまだ良かった、これが投手に飛んで行ってたら直撃は避けられなかった」といったコメントも見られた。
今回のプレーでは距離があったこともあり、浅村は余裕を持って柳田のバットを回避している。だが、過去には折れたバットを避けきれなかった選手が怪我を負ってしまったケースも少なくない。
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今回も一部から心配された投手への直撃が、現実に起こってしまったのが2011年9月1日のロッテ対日本ハム戦。7回裏1死、ロッテ3番手・伊藤義弘は日本ハム・陽岱鋼を遊飛に打ち取るが、この際に陽の折れたバットの鋭利な部分が左ひざ付近に直撃。バットが刺さり流血した伊藤は立ち上がれなくなり、選手・コーチに抱きかかえられながら負傷交代。すぐに病院で診察を受けた結果「左下腿三頭筋打撲と挫傷」と診断された。
伊藤は同年の最終盤に復帰したが、この怪我を機に左足をかばうクセができてしまい、その影響で翌年以降は右肩痛など数々の故障に悩まされるように。結局、怪我前の投球を取り戻すことはできないまま、2016年限りで退団・引退となっている。
折れたバットが味方に“誤爆”してしまう事態が起こったのが2008年8月12日のロッテ対オリックス戦。6回表2死二、三塁の場面でロッテ・サブローが二塁打を放つも、折れたバットが三塁ランナー・塀内久雄の右側頭部に直撃。塀内は頭を押さえながら本塁に生還するも、そのまま倒れ込み負傷交代に。病院に直行し検査した結果、骨や脳に異常はなかったが裂傷で16針縫うこととなった。ただ、幸いにも塀内は長期離脱には至らず、同月16日の対楽天戦から試合に復帰している。
今から35年以上前の1984年4月11日西武対日本ハム戦では、折れたバットが前方ではなく後方に飛び捕手を直撃している。7回裏、日本ハム・大宮龍男が三ゴロを放った際にバットが折れたが、そのバットが西武捕手・黒田正宏の左側頭部を直撃。地面にうずくまった黒田は病院に運ばれ、9針縫う羽目になった。なお、黒田は3日間の入院後即一軍に復帰したが、本人によるとこの間は患部の腫れを抑えるため医者から寝ることを禁止されていたという。
投手の球の威力や打者のミートポイントに大きく左右され、基本的には予測が不可能なバットの折れ。当たってしまった選手は不運だったという他ないのかもしれない。
文 / 柴田雅人