>>「誤差なし」とならなかったキムタクドラマの事情<<
1998年、刺殺事件が発生。ここで使用された凶器はバタフライナイフだったが、犯人は、その前年に放送されたドラマ『ギフト』(フジテレビ系)で、木村拓哉がバタフライナイフを振り回している場面を見て、そこに「かっこ良さ」を見出したなどと供述。以降、このドラマは事件の影響を受け、当時リリースされていたVHSも発売禁止となり再放送もされなかったが、昨年、DVD化されている。
反対に、番組側がある間違ったイメージを植え付け、騒動を起こしてしまった例もある。それが『コント55号の裏番組をぶっとばせ!』(日本テレビ系)。ここで一躍脚光を浴びたのが「野球拳」。ジャンケンで負けると衣装を1枚ずつ脱ぐという企画が大ウケ。だが、もともと野球拳は愛媛県松山市の郷土芸能だった。ここに「脱衣」ルールを加えたことで視聴者に野球拳が誤ったイメージで伝わる結果に。「子供が野球拳をマネする」などの苦情も相次ぎ、番組は1年間で終了した。
1973年、女性が男に首を絞められて殺された事件が起きた。男は犯行時、時代劇『必殺仕置人』(朝日放送)を見ていたことを嗅ぎつけた新聞各紙が「必殺仕置人殺人事件」と書き立てたのだ。男は殺害前の時間帯に偶然これを見ていただけであり、それが殺害動機になったわけではなかったが、この影響で『仕置人』の延長話は立ち消えとなり、次のシリーズからはソフト路線に変更。しかも『助け人走る』と、「必殺」のタイトルを外して放送されたこともあった。
また、直接的に番組から誘発されたわけではないものの、何かしらの着想がないと遂行できないと思われるのが、2017年12月に起きたある事件。産業廃棄物の処理場で2人が同僚男性を押さえつけ、作業ズボンの上からエアーコンプレッサーで肛門に空気を入れて死亡させ、傷害致死の容疑で逮捕されたものだ。両容疑者は、同僚同士で普段からこうした“遊び”に興じていたと弁明していたが、一部のユーザーからは、肛門に空気を注入するというバラエティに影響されたのではないかという指摘もあった。
テレビマンは視聴者への影響を考慮するあまり、委縮してしまうのもいけないが、過度な演出も良くない。バランス感覚が問われるところだ。