両者は2016年の秋季東京都大会決勝戦で対戦している。清宮はすでに全国区のスターとなっていたが、櫻井の曲がり幅の大きいスライダーに翻弄され、5打席連続三振を喫した。清宮にすれば、リベンジの思いもあったはずだが、結果はセンターフライ。同試合を終えた時点での清宮の打撃成績だが、6戦12打数1安打。栗山英樹監督は、
「何なんだろうね、幸太郎のワクワクしなくなっちゃった感じは…。なんか、打球がさみしい」
と、容赦なく言い放った。
野村、万波など他の若手選手たちは結果を出しつつある。開幕一軍も厳しそうだが、他球団はそうは見ていなかった。“爆発”寸前、今季の要注意選手の一人だという。
「清宮の調子が良い時は、内野手が一歩も動けないほど速い、ライナー性の打球が放たれます。それから、もう一つ。外野フライですよ。彼の飛球は滞空時間が長い。これはホームランアーティスト独特のもの」(ライバル球団スコアラー)
その飛球の滞空時間が「さらに長くなった」というのだ。
「ヒットが出ない理由? ちょっとしたタイミングのズレ。実戦の中で修正できるでしょう。ただ、彼は不器用な選手だから、時間が掛かるかもしれないが」(前出・同)
そう言われてみると、思い当たる点もある。高校時代の難敵・櫻井を仕留め切れなかったセンターフライだ。櫻井は打球が上がった瞬間、センター後方を振り返り、その行方を見入っていた。そのセンターを守っていた梶谷はバックスクリーンの3メートル手前で足を止めていたが、捕球と同時に安堵するように息を吐いていた。
「2、3週間前まで右肘の故障でリハビリをやってたんですよ。このまま実戦を積んでいけば、本塁打も増えていく」(前出・同)
栗山監督はあえて厳しい言い方をしているようだ。チーム関係者によれば、試合前に清宮を呼び出し、喝を入れるようなお説教を毎日のように繰り返しているという。
「栗山監督は周囲が反対しても、二軍ではなく、一軍帯同で清宮を育てたいと思っています。でも、ヒット、ホームランという結果を出せない以上、一軍帯同はエコ贔屓となり、チームを乱すだけ。そういうジレンマもあって、清宮には厳しく接しているようです」(関係者)
もっとも、一塁に主砲・中田翔がいる。その中田が余裕をカマしているところを見ると、「清宮はまだライバルではない」と見下しているのだろう。清宮が覚醒するかどうか、その時期が近づいてきたかどうかは中田を見ていれば分かりそうだ。(スポーツライター・飯山満)