千葉ロッテと東北楽天のオープン戦が行われた(3月1日/ZOZOマリンスタジアム)。楽天の先発マウンドを託されたのが、昨季まで千葉ロッテに在籍していた涌井秀章だった。4回を投げ、被安打2、奪三振数6、失点1。ロッテサイドからも「真っ直ぐにキレがあった」と称賛の声も上がっていた。
当の涌井は「古巣対決、通い慣れた球場での登板だが?」の質問に、「そういう感情はどこかへ置いてきた」と、返すだけ。このクールさが涌井らしさでもあり、今季はやってくれそうな雰囲気だった。
「試合前、ロッテ側の首脳陣を訪ね、挨拶はしていたようです。遺恨というのはないと思います」(関係者)
しかし、同日の好投はちょっとブミキに見えた。涌井と言えば、ストレートも速く、変化球の持ち球も豊富だ。その持ち球の全てをテストするのではなく、特定の変化球しか使わなかったようなピッチングだった。
興味深かったのは、3回一死で福田秀平を迎えた時。サードフライに仕留めた変化球は、ロッテ時代には投げていなかった球種だ。
「左打者対策で昨季途中から練習していたボール。実戦で使えるレベルになったようですね」(前出・関係者)
そんな声もあれば、「楽天に行ってから練習を始めたボール。まだ試運転段階」なんて情報も聞かれた。
「近年、涌井の成績が振るわなかった理由は、直球のスピード、威力が落ちたこと。普通のピッチャーなら、直球のキレを取り戻そうとしますが、涌井は同時に『新しい変化球』の習得にも励んでいました」(プロ野球解説者)
福田秀平を仕留めた新しい変化球は、左バッターの外側に流れて行くもの。球種名は教えてくれなかった。記者団の「新球をテストしたのは、福田だけ?」の問いにも、涌井は否定も肯定もせず、とぼけていた。しかし、ボールを受けた捕手の太田は「右バッターのインコースにも使えた」とコメントしている。
太田捕手の証言通りなら、新球をかなりの数でテストしていたことになるが…。
繰り返しになるが、同日の涌井は持ち球の変化球を全て使っていない。ウイニングショットに使っていた変化球はほとんどスライダー系のボールだった。同じ配球パターンを繰り返していたため、多くのメディアは「手の内を隠している」「限られた場面でだけ、新球をテストした」と思った。
ひょっとしたら、以前から投げていた変化球の軌道を変えるなどし、マイナーチェンジさせた持ち球もあったのではないだろうか。取材陣を攪乱させるのも、ベテランならではのピッチングだ。本当は古巣を見返してやろうという思いでいっぱいなのでは? (スポーツライター・飯山満)