今季の岡本は、打率2割6分5厘、本塁打31、打点94。昨季は史上最年少で「3割、30本、100打点」を達成した。今季は対戦チームの厳しいマークにもあったが、優勝争いを繰り広げていた中での「30本以上、94打点」は大したものである。まだ、23歳だ。
「その岡本がノンタイトルで終わる可能性も出てきました。ベストナインに選出されなければ、2年連続でタイトルなしです」(球界関係者)
本塁打31は、リーグ6位。打点94は坂本と並んで4位。斬り込み隊長的な役割を担う坂本は「生え抜きの右バッターで初となるシーズン40本塁打を達成した。本塁打40に関する価値はチーム内の話ではあるが、過去に首位打者、最多安打、最高出塁率、ベストナインを獲得している。こうしたタイトルが今日の地位につながった。そう考えると、「岡本にもタイトルを」の声が出るのも、当然だろう。
「岡本は他選手との兼ね合いで、サード、ファーストの両方で出場してきました。外野の守備にも着いたはず。守備位置が固定されていないので、ベストナイン選出は厳しいかもしれません」(ベテラン記者)
「無冠」と言えば、清原和博氏が思い出される。NPB史上歴代5位となる通算525本塁打を放ちながら、1回も三冠のタイトルを獲得していない。
80年代の西武を知るプロ野球OBがこう言う。
「優勝争いをするチームだと、個人タイトルの奪取は難しいんです。エース投手との対戦ばかりになりますし。優勝争いをしているチームにいると、自ずと勝利に対する執着心が強くなります。その執着心が…」
フォア・ザ・チームの精神だ。走者を置いた場面で打席が回ってくると、1点を確実に取るため、ホームランではなく、右方向へのバッティングを意識する。2ストライクを取られた後は、その意識がさらに強くなるという。
「今年のCS初戦、DeNAは筒香(3番)の打席で、一塁走者を走らせました。主軸バッターが打席に立つと、ノーサインになるケースもあります。でも、短期決戦のように『勝ち』を意識した試合では、主砲も自由にバットを振らせてもらえません」(前出・球界関係者)
そんな話を聞かされると、優勝争いを繰り広げたチームから出たタイトルホルダーは貴重だ。
今回、「岡本にもタイトルを」の声が出始めたのは、彼にはもっと上を目指してほしいとの期待感でもある。また、早くタイトルを獲得させなければ、本塁打や打点の数字だけで満足してしまう選手に陥る危険性を察したのだろう。CSファイナルステージで、岡本は「まだ上を目指せる」ことを自らのバットで証明しなければならない。(スポーツライター・飯山満)