金田氏と言えば、マウンドから対戦バッターに「打ってみぃ!?」と挑発し、真っ向勝負を挑むなど豪快、かつ歯に衣着せぬ“ユニーク発言”で球界を大いに盛り上げてくれた。一方で、現役時代を知らない世代からは、「猛練習」「走り込み」「長時間トレーニング」といった“根性野球”の象徴のようにも捉えられていた。
確かに、「通算イニング数5526回3分の2」なんて記録は、ド根性と並外れた体力がなければ達成できなかったはずだ。「先発、中継ぎ、クローザー」と投手の分業制が完全に確立された今日では、“第2のカネやん”は絶対に現れないだろう。
しかし、現役時代をともに戦った年長のプロ野球解説者、「監督・金田」を知るプロ野球OBたちは、ちょっと違う見方をしていた。
「あの人ほど、体調管理や練習メニューのことを考えていた野球選手はいない」
複数の年長者がそう口にしていた。
食べる量も多かったそうだが、「一度に体作りに必要な栄養を摂るため」とし、鍋料理やスープを勧めていたそうだ。今日では筋力アップのトレーニングを行う際、タンパク質の補給のため、プロテインを摂取する。それに対し、金田氏は鶏肉の鍋を食べていたそうだ。鍋料理だから、同時に野菜も大量に摂取できる。また、走り込みの前日に赤身の肉を食べていたそうだ。氏の食事は理に適ったものばかりなのだ。
走り込みの量もハンパではなかったそうだが、水分補給は当時では珍しかったミネラルウォーターのみ。トレーニング前と後で、食事メニューも変えていた。
「金田式健康棒」なんてユニークな健康グッズも出していたが、ダルビッシュ有が股関節の柔軟性を大切にしていることを照らし合わせると、今日の科学的トレーニングにも相通じるものがある。
「金田さんがどんな練習をし、トレーニングメニューに合わせて変えていた食事の内容などを、きちんと残しておくべきでしたね。それがあれば、今日の野球界の練習メニューも変わっていたと思います。金田さんは独学で勉強し、本能的に何を食べたらいいのかを分かっていたんでしょう。それを今日の医師、トレーナー、大学教授などが研究すれば、科学的・医学的根拠のある練習法が完成したかもしれません」(プロ野球OB)
私事になるが、投手・金田、監督・金田は知らない。しかし、解説者だった氏からお話を聞かせていただいたことはある。2回目のロッテ指揮官を退かれて数年が経っていたころで、話し出したら、止まらないという感じだった。吉川英治著の宮本武蔵の話を切り出すなど、博識な一面も覗かせていた。
トレーニング、体調管理、食事に関して先進的な持論を確立していた。ひょっとしたら、「伝えるのは苦手」だったのかもしれない。トレーニングで「故障しない肉体」を作り上げた氏は、時流である投球数制限や連投NGをどう捉えていたのだろうか。合掌。(スポーツライター・飯山満)