『二塁・浅村』が定着すれば、ベンチスタートとなってしまうのが、片岡の人的補填で移籍してきた脇谷亮太(32=前巨人)だ。
伊原監督は巨人時代の脇谷が出場機会に飢えていたことを知っている。正二塁手(片岡)の退団、その補填で来た脇谷に易々とレギュラーの座を与えないのも「厳しく育てる伊原流」だろう。脇谷の鋭い打球は西武に入っても見劣りしない。挟殺プレーでも堅実な守備を見せていたのでチャンスはあるだろう。
また、内野には新外国人のコーディ・ランサム(37)が加入。01年からのべ9球団を渡り歩いた苦労人で、内野の全ポジションが守れる。このランサムが遊撃でノックに入る場面もあったが、「メジャー中継でお馴染みの強肩送球で打者走者をアウトにする」守備ではなかった。身体能力の高さにモノを言わせるのではなく、外国人遊撃手には珍しい忠実プレーの内野手だった。打撃も“堅実”だ。バットスイングも力ではなく、芯でボールを捉えて飛ばしている。スイング全体に軟らかさが感じられ、変化球の多い日本の野球スタイルにも適応できそうだった。
外野陣には森本稀哲(32=前横浜DeNA)が加わった。
だが、森本は『西武野球』をもう一度認識し直さなければならないと思った。秋山翔吾、熊代聖人、栗山巧らと外野ノックを受けていたときだった。河田雄祐コーチは意図的に緩い打球を放ち続ける。森本は守備にも定評のあった選手だが、
「遠投の練習じゃない。しっかりとチャージしろ!」
と、同コーチの喝がグラウンドに響き渡った。「捕球と同時にスローイングできる体制をきちんと作れ」という意味だろう。栗山や秋山たちの捕球姿勢は「すぐにでも投げられる」よう、腰が入っている。だが、森本は捕球した後、もう一歩か二歩動いてからスローイングの姿勢に入るのだ。この捕球の仕方では、堅実野球の西武では生きていけない…。
ブルペンでは、FAの人的補填で移籍してきた中郷大樹(29)と新人の山口崇之(24=トヨタ自動車東日本/B班)が目に付いた。この2人は前評判よりも真っ直ぐに威力がある。とくに山口は「高校、社会人時代は故障も多かった」と聞いているが、投球フォームに無駄な力は全くなく、体のどこか一カ所に無理をさせているようには見えなかった。カーブの軌道も大きい。ドラフト5位? よくこの順位で残っていたものだと思った。
新外国人投手のグレッグ・レイノルズ(29)とマイケル・ボウデン(27)だが、特徴の違う右投手を揃えたようである。ボウデンはフォークボールがあり、ストレートで攻めてくるタイプ。レイノルズは140キロ台半ばだが、201センチの長身の全てを使って投げているので、投球そのものに“威圧感”がある。カーブ系、スライダー系の何種類かの変化球を投げ分けており、持ち球は多い。どのボールが日本で有効なのかはテストしながら決めるのだろうが、一つ一つの精度が高い。両外国人投手はともにオーバーハンド。この2人がローテーションを守ってくれれば、今季より救援にまわるサイドハイドの十亀剣も生きてくる。西武の投手力は再整備されたと言っていい。
近年はペナントレース前半で出遅れが優勝争いに影響した。代打でもいい。起爆剤で森友哉(18=大阪桐蔭)を“お披露目”させる方法もあると思うが…。