阪神タイガースが販売する公認カレンダーは優良商品である。壁掛け、卓上タイプ、人気選手個人のものなどがあり、関係者によれば、壁掛けタイプは発行部数約16万部の売上げトップ商品だそうだ。
「どの球団もそうですが、1月は監督。3月と4月に起用される選手は『チームの顔』です」(球界関係者)
主力選手をどの「月」に配置するか、一人で撮影するか、それとも、複数になるかは、フロントが決めるという。前年度の成績、チームの意向、個人グッズの売上げなどが検討材料となるのだが、2017年度版の3月と4月に起用されたのは、鳥谷敬(35)と藤浪晋太郎(22)だ。球団HPでもサンプルが開示されているが、両選手とも16年は成績を落としている。とくに鳥谷は打率2割3分6厘まで沈み、連続フルイニング出場の記録が途切れるなど“最悪のシーズン”だったはず。関西圏で活動しているプロ野球解説者がこう言う。
「トリ(鳥谷)の成績が落ちるにしたがって、チームの雰囲気も悪くなった」
鳥谷を非難しているのではない。金本知憲監督(48)がチーム改革の筆頭キーマンに挙げたように、鳥谷は大きな影響力を持った選手なのだ。報道陣に見せる限りの性格は口数が少なく、仲間たちを誘ってどこかに出歩くようなタイプでもない。遊撃手、中核打者としての役目をそつなくこなし、その堅実さでチームから一目置かれていた。
「球場入りの早さでは、鳥谷はチームで1、2を争っています。マシン相手に黙々と打撃練習をこなし、そのルーティンは不振に陥ったときも、また、スタメンを外されてからもその姿勢は変わらなかった」(前出・プロ野球解説者)
金本監督から「もっと声を出せ」「チームを引っ張って」と叱咤され、鳥谷もその期待に応えようとしていた。キャンプ中から別人のように声を張り上げてきた。しかし、自身の成績が悪いと、声を出しにくくなる。悩むこともあった。その重苦しい空気がチーム全体に伝染して行った。
「今季からキャプテンは福留(孝介=39)に代わります。福留は『トリの負担を少なくしたい』と言っていました。鳥谷が復活すれば、阪神は自ずと強くなるという意味」(前出・同)
責任感の強い男でもある。チーム改革の筆頭キーマンとしての重圧が、鳥谷を不振に落とし込んだのではないだろうか。球団が公認カレンダーの“主役”に選んだのはこれまでの功績ではなく、「復活を信じている」というメッセージではないだろうか。
鳥谷自身も公認カレンダーの配置については分かっているはずだ。そのフロントからの檄を発奮材料にできるか、それとも、新たな精神的重圧となってしまうのか…。
金本阪神の命運はベテラン鳥谷のバットに掛かっている。