その糸井の4年契約が明らかにされた後、セ・リーグのライバル球団から「あのウワサ」が囁かれるようになった。
「やっぱり、本当かも…」セ・リーグが指名打者制へのルール変更を検討しているという。
何人かのプロ野球解説者にも聞いてみたが、第一声は「まさか!?」だった。しかし、まんざらでもないらしいのだ。
「セ・リーグは交流戦での負け越しが続いており、日本シリーズも4季連続で敗れています。指名打者制に変えれば、投手に打席が回って来ないので救援投手を送る際、次イニングの打順を確認する必要はないし、攻撃的な打順も編成できます」(球界関係者)
指名打者制になれば、守備面で衰えたベテランも現役生活を延ばせるかもしれない。また、ドラフト候補を絞り込む際も「守るところがない」と消極的にならなくて済む。実際、「打撃力は一流だが、守るところがない」として指名を見送ったケースもあった。いくつかの例を上げれば、1996年、セ・リーグ全球団は松中信彦の指名を見送った。のちに三冠王に輝いた際、「無理をしてでも獲っておくべきだった」と後悔したところもあり、13年ドラフト会議でも、埼玉西武に1位指名された森友哉に対しても、「キャッチャーでなければ…。せめて三塁が守れるのなら」と地団駄を踏んでいた。今季、頭角を表した山川穂高(埼玉西武)にしても、セ・リーグ各球団は守備難で指名リストから外している。
「近年のドラフト候補生は、12球団OKの姿勢ですが、大学生、社会人の投手はセ・リーグ球団に指名されると、ちょっと驚くんですよ。大学、社会人は基本的に指名打者制なので、高校を卒業して以来、バットを振っていないとかで」(アマチュア指導者)
もっとも、セ・リーグには「バントをする」と分かっていても、それを成功させなければならない『投手バッター』の技術や、守備陣営のきめ細やかさがある。ピッチャーも9人目の打者として攻撃に加わること、次イニングの打順を加味しながらの投手継投は心理戦としての魅了になっている。しかし、阪神が糸井に4年の長期契約を提示したのを受けて、「セ・リーグの指名打者制への変更の話は本当かもしれない」と勘繰る声も出始めた。
現時点での「本気度」は分からない。仮に来年、議案提議されて本格検討が始まるとしたら、実現するのは2、3年後だろう。そのとき、糸井や鳥谷が指名打者としてスタメンに名を連ねていることも十分に考えられる。阪神は水面下でのこうしたルール変更を見据えて、35歳の糸井に4年契約を提示したのだろうか。
主力バッターが30代半ばに差しかかった巨人、外国人選手の発掘が巧い中日も交渉の幅が広がるとし、賛同するかもしれない。本拠地球場が広くない東京ヤクルト、DeNAもさらに攻撃的な打順を編成できるが…。
糸井獲得は“セ・リーグ超変革”の前触れだろうか。(一部敬称略)