「巨人が狙っていた外野手は埼玉西武の秋山翔吾でした。順調に行けば、来年、国内FA権を取得します。でも、西武は秋山と今オフ、3年契約を結んでしまった。そこで陽岱鋼の獲得が検討されたんです」(球界関係者)
実際、巨人が陽サイドと接触したのは、楽天、オリックスのあと。オリックスに断りを入れてから時間が掛かりすぎたようだ。その理由は陽本人だけの意志では決められなかったからだという。
「陽は台湾のスター選手です。台湾で日本ハムの試合が中継されることも多々ありました。陽目当ての日本プロ野球ファンが多いからですが、彼は投手ではなく野手なので、台湾のテレビ局側にすれば、試合に出る日と出ない日の視聴率の落差を心配しなくて済みます。来季、台湾のテレビ局が巨人戦をメインに切り換えてくるのは確実です」(前出・同)
NPB関係者によれば、台湾側とのテレビ放映料は1試合約10万円。巨人主催ゲームの一括契約となれば、700万円強の計算だ。
「ちょっと少ないのでは?」と思うかもしれないが、台湾の平均年収は180万円とされ、台北立法院が発表した国家予算は日本円で約6兆6052億円(2014年)。人口の違いこそあれ、『国民一人当たりの購買平価』では日本を上回った年もある。オリックス、楽天、巨人は「陽獲得で“上り調子”の台湾に市場拡大」なる目論見があったとしても、決しておかしくはない。
「今季、巨人は三軍チームを現地遠征させていますし、王貞治氏も参加したOB戦も台湾で開催されました。震災復興の寄付もしたと聞いています」(プロ野球解説者)
かつて、韓国球界の英雄・李承燁が在籍していたころ、やはり巨人戦が中継されていた。台湾企業も「英雄である王貞治氏が現役生活を送った巨人に、陽が移籍した。王氏と同じユニフォームを着る」ということで広告出資を考えてくるのではないだろう。
「ソフトバンクは今オフの国内FA市場に関心を示しませんでした。来季は育成の方針によるものですが、ソフトバンクが土壇場で挙手し、陽をかっさらうと予想した関係者も少なくありませんでした。王氏が球団会長を務めており、台湾と福岡の移動距離を考えると、ソフトバンクの沈黙はブキミでした」(前出・同)
今季の巨人は7人がセンターの守備に着いた。「高橋由伸監督は就任当初、立岡を期待していた」とも聞いているが、打撃不振で定位置を掴みきれなかった。世代交代の時期にあることは高橋監督も分かっていたはずだが、勝たなければならないとする厳命には逆らえなかったようだ。
陽サイドも読売グループと組むことがもっともビジネスになると判断したのだろう。