「采配が裏目に出たこともあったようです。監督1年目だから仕方ないと思いますが、サインを出すタイミングを見誤って、好機を逸する場面があったそうです。バントのサインを出そうとして、迷っているうちにバッターのカウントがすでに2ストライクまで追い込まれていたとか」(在阪記者)
チームとして、レベルアップしなければならない部分もある。
チーム総盗塁数59。リーグワーストであり、パ・リーグ盗塁王・糸井嘉男の53を足して、リーグトップの広島の118にほぼ同じ計算になる。セ・リーグ対戦チームも糸井に対してはかなり警戒しているだろうから、53の盗塁数は減るかもしれない。しかし、チーム全体に「走る」の意識が浸透すれば、芽生えれば、糸井一人に頼りきる図式にはならないだろう。
攻撃陣に「走る」の意識を定着させるのと同時に、着手しなければならない『守備の課題』もある。盗塁阻止率だ。今季、チームでもっとも多くスタメンマスクを被った原口文仁の盗塁阻止率は2割3分3厘。一時期は2割を切っていた。秋季キャンプでは坂本誠志郎が盗塁を刺すバッテリー練習でかなり高い阻止率を見せた。第2クール初日まで100パーセントだった。打撃力のある原口を一塁にコンバートする案も検討されたが、矢野燿大作戦兼バッテリーコーチは坂本、梅野らを含め、正捕手争いを続けさせる結論を出した。
「盗塁阻止率が悪いのは、投手にも責任があるんです。阪神投手陣は全体的にクイックモーション、牽制がヘタ。秋季キャンプではブルペン投球でクイックや牽制の練習もさせていました」(プロ野球解説者)
走塁強化と、この盗塁阻止率向上を含めた投内連携の練習を統括指揮していたのは、高代延博ヘッドコーチだった。
来季、首位争いができるかどうかは高代ヘッドに掛かっているのではないだろうか。高代ヘッドは今季、打撃、投手(バッテリー)、守備の各担当コーチに配慮し、「見守る」「一歩引いて苦言を呈する」の立場を貫いた。
「若手に二軍降格を告げる役目、ミスをした選手を叱るのは高代ヘッドでした。いちばんイヤな役目を買って出たというか…」(チーム関係者)
前出のプロ野球解説者がこう言う。「金本監督は北條(史也=22)を認めつつあります。『(バットを)振る力が付いてきた』と褒めており、おそらく、正遊撃手として来季はスタートさせるでしょう。鳥谷をショートで競わせるより、両方を生かす方法も模索しているような印象を受けました」
高代ヘッドの教えが浸透すれば、攻守ともにレベルアップできる。北條、糸井、盗塁阻止率の不安を解消できる正捕手が出現すれば、チームの要ともいえるセンターラインも構築できる。また、北條にとって、来季が飛躍の年となれば、首位戦線で戦うのも決して難しいことではない。