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検証2「トラの糸井は華麗な守備を見せてくれるのか?」

 去る11月22日、球団納会が行われ、金本知憲監督(48)は「センター糸井、ライト福留」の布陣を明言。来季40歳を迎える福留孝介外野手の一塁転向案が撤回されたわけだが、スポーツ新聞の<堅守の2人が右中間を>の見出しは鵜呑みにしないほうが良さそうだ。
 糸井嘉男は今季、通算7回目となるゴールデングラブ賞に選ばれた。強肩、俊足。外野守備も巧いというイメージだが、気になるデータもある。
 守備率9割6分7厘。
 これは糸井の今年の守備力を表す数値で、パ・リーグ外野手部門の選考対象選手18人のなかで、もっとも低いのだ。オリックス全体での守備率が9割8分4厘だから、“チーム平均値以下”となった。もっとも、今季の糸井の守備機会は184、エラー(失策)は6。プロ野球の世界で失策6は“微妙”で、『守備のスペシャリスト』としては物足りない数字となる。

 ちなみに、阪神の守備率は9割8分2厘。糸井以上のチーム平均値ではあるが、リーグワースト。だが、阪神の外野手だけで見てみると、糸井の守備率に対する見方が変わってくる。今季、30試合以上の外野守備に付いた選手は板山、江越、高山、中谷、福留、横田の6人。ゴールデングラブ賞の選考対象選手となりうる「チーム試合数2分の1以上、外野手として出場」の条件を満たしたのは、福留と高山の2人だけで、糸井以上の守備率数値を出したのは、横田(10割)、福留(9割9分5厘)、江越(9割8分)。福留の失策数は1、高山は糸井と同じ9割6分7厘だった(失策6)。
 数字で見ると、阪神外野手の“巧い人ランキング”は「横田、福留、江越、糸井&高山」の順。横田と江越は打撃面でしっかりアピールし、シーズンを通して安定した力を発揮できれば、糸井と福留を追い抜ける位置にいることは分かった。

 もっとも、横田と江越のレベルアップは来年なのか、それとももう少し先になるのかは彼らの努力次第。打撃力、長いペナントレースを乗り切るスタミナと安定感も加味して考えられる外野のレギュラー候補は、福留、糸井、そして「レフト高山」。来季40歳となる福留の年齢が気になる。しかし、今季シーズン前もその話は出ていた。それでも、レギュラー外野手として、チームでいちばん高い守備率数値を残してくれた。金本構想の「中堅糸井、右翼福留」は、糸井の俊足強肩を生かすというよりも、「福留を外野守備から外せない、一塁転向はもったいない」との判断によるものではないだろうか。糸井をオリックスと同じ右翼に置く布陣は、実はプラスではないという守備率数値も知っていたのだろう。
 「足の速い選手は守備率の数字で損をすることもあるんです。普通の選手が追いつけない打球にも追いつくことができる。それはプラスではあるが、不十分な捕球体勢により、エラーをしてしまう…。糸井のファインプレー、強肩に救われた場面も多く、数字に表れない部分がゴールデングラブ賞の選出につながったようです」(プロ野球解説者)
 いつまでも「中堅糸井、右翼福留」ではいられない。金本監督が急がなければならないのは、江越と横田を育て上げることだ。

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