スポーツメディアでは、大型補強を行った巨人の新守備陣営が予想されていた。今さらだが、その予想布陣を見て「補強の弊害」を再認識させられた。たとえば、正三塁手候補は村田修一(36)になっていたが、その対抗には元楽天のケーシー・マギーの名前があり、一塁手候補にも挙げられていた。楽天が日本一になった2013年の5番打者、得点好機に強いあの打撃力を「控え」に回すとは思えない。昨季復活し、ベストナインにも選ばれた村田と正三塁手の座を競わせるとしたら、あまりにも残酷だ。どちらかを一塁手で起用する場合、阿部慎之助が使えない。外野との併用となるがギャレットもいる。村田、阿部、マギー、ギャレット…。チーム内競争が激化するのは芳しいことだが、ポジションの重複によって攻撃力は逆にダウンしてしまうのではないだろうか。
「スタメンで試合に出て、4打席立って、長所が発揮される選手もいます。長くレギュラーを張っていた選手はそのタイプで、ベテランになって代打役に適応できない選手もいます」(プロ野球解説者)
ベテランが試合出場を保証されないのだから、若手の出場機会はさらに少なくなる。中堅、若手にとって、「少ないチャンスをどう生かすか」が、のちのプロ野球人生を決めるといっても過言ではない。
そんな厳しい状況に立たされた若手の一人が、将来の主砲候補・岡本和真(20)だ。
「岡本は外野の練習もさせます。打撃センスは本当に素晴らしいものを持っていますが、あの守備力では使えない」(球界関係者)
「岡本を育てる」の指令も、当然、高橋由伸監督(41)に届いている。「育てる」とは、試合で使うこと。使ってもらうには、岡本自身がもっとアピールしなければならないわけだが、ベテラン村田と争った昨季も苦戦させられたのに、今年はそこにマギーも加わる。だが、彼らが年齢的に衰えるのをこれ以上待つわけにはいかないのだ。
「松井秀喜氏、坂本勇人は2年目にレギュラーポジションを獲りました。岡本は2年目の昨季にレギュラーポジションが獲れませんでした」(前出・同)
松井氏や坂本が新人だったころとチーム事情は異なる。しかし、プロ野球界で名を馳せた選手の圧倒的多数は“早熟”だった。「高卒野手は大変」(前出・プロ野球解説者)と“差し引いて見る”傾向もなくはない。だが、やはり、スター選手になるには3年目、4年目も「一軍と二軍を行ったり来たり」ではダメなのだ。3年目を迎える岡本は、今季がラストチャンスのつもりで臨まなければならない。
先のプロ野球解説者がこう言う。「鳥谷が新人だった時代、岡田彰布監督は戦力ダウンを覚悟して鳥谷を起用した部分もあり、野村克也監督も田中将大の将来を考えて一軍で洗礼を浴びさせました」
このコメントを聞く限り、補強の弊害ということになるが、そうではないらしい。「我慢して使う」なる言葉も球界にはあるが、鳥谷や田中、あるいは松井秀喜氏に対する長嶋茂雄監督もそうだったと思うが、彼らには指揮官に我慢して使わなければと思わせるもの、我慢しようと思わせる何かを持っていたのだ。
昨季開幕戦だった。高橋監督はスタメンレフトをオープン戦でアピールした新人の重信慎之介と34歳を迎える亀井善行を天秤に掛け、亀井を選んだ。色々な理由があったとは思うが、高橋采配はリスクを嫌う傾向が強い。岡本も高橋監督を我慢させる何かを掴まなければ、出場機会は減る一方だ。