石田真敏総務相は、閣議後の会見で「スマホなどを用いて様々な場所で放送番組を視聴したいという国民視聴者の期待に応える」と説明した。
一見すると、時代の変化に対応した改正のように思えるが、そこには“落とし穴”があるという。
総務省担当記者の解説。
「若い世代は、パソコンやスマホでYouTubeなどの動画を見ていて、『テレビはまったく見ない』という人が多い。こうしたテレビ離れの傾向は年々、拍車がかかっていて、“テレビを持っていない世帯”も珍しくなくなってきました。現状、NHKはテレビの設置状況で受信料を徴収するので、このままでは“食いぶち”がどんどん減っていく。そこで目を付けたのが、ネットだということです」
つまり、今後は「テレビを持っていないから受信料は払わない」という言い訳が通らず、自宅にネットの環境が整っていて、スマホや携帯を持っているだけで、NHKとの契約を迫られる恐れがあるのだ。
その先鞭ともいえる判例もできている。ワンセグ機能付き携帯電話を巡り、NHKとの放送受信契約を締結する義務があるかどうかを問う訴訟で、最高裁が「契約の義務がある」とし、判決が確定したのである。
「よほど嬉しかったのか、NHKは通常、ニュース動画記事は2日程度で削除するのに、この判決のニュースについては1カ月近く経っても公開し続けています。自局の正当性をニュースの体裁で訴える姿勢は、あまりに利己的で疑問を抱きます」(全国紙社会部記者)
時代の変化という観点でいえば、現代は「課金」の時代だ。かつてはCMの広告収入で成り立つ民放が無料で視聴できることから、「テレビなんか、わざわざ金を払ってまで見たくない」という人が大多数だった。
ところが、有料の衛星放送やケーブルテレビが普及し、視聴者は「見たいコンテンツに金を払うシステム」に慣れている。ケーブルテレビに加入している40代の会社員が言う。
「ひと昔前はケーブルテレビで、サッカーやF1など海外のスポーツを視聴していました。今はネットのスポーツ専門有料サイトで楽しんでいますが、子どもが小さいのでケーブルテレビも解約していません。妻が家事をするときに、ディズニーなどの子ども向けチャンネルを流しておけばいいからです。ここだけの話、AVもネット課金で楽しんでいますから、見たいコンテンツに金を払うのは当たり前ですよ。NHKも、朝ドラと大河ドラマだけ見たいという世帯もあるだろうし、NHKスペシャルやクローズアップ現代+だけ見たいという人もいる。“ドラマ・パック”とか“ドキュメンタリー・パック”という料金体系もあればいい」
(明日に続く)