東急大井町線の終点が二子玉川駅。帰宅を急ぐ会社員たちと一緒に、始発駅大井町から押しつ押されつ終点まで乗ると、乗降客の顔から次第に緊張感が取れて柔らかくなってくるのがわかる。品川区と目黒区と世田谷区の住宅地を縫って走るこの路線は、いわば下駄履き郊外電車。各駅とも改装工事が終わって、見違えるようにおしゃれになった。その証拠に、ほんとうに見違えて年寄りたちがまごついている。
リニューアルの総仕上げとして、二子玉川(通称ニコタマ)駅周辺は「都心もうらやむ」高級マンション建造の槌音(つちおと)が高い。島屋SCがあることでもわかるように、沿線随一おしゃれな街の駅中央改札口の真ん前に、立ち飲み居酒屋があっていいのだろうかと心配していたが、杞憂(きゆう)ではなくやはり仮住まい、近々、移転するとのことだった。
「酒林」は酒池肉林の略、ではなくて酒屋が新酒の出来上がりを知らせるために、店頭に下げた杉球のこと。地元の新玉川酒店が隣に開いた立ち飲み屋だから、しごく妥当な命名ではある。酒は新政、一ノ蔵、浦霞、景虎、澤ノ井を常備。ビールは緑色のごつごつした瓶が目印で、根強いファンもいるハートランド。センスのよいラインアップである。
引き上がれば、鉢の水が4分の1になるのではないかと思われる2匹の巨大金魚にじいっと見られていると、つらいものがある。こっちが目を外しても、金魚は外さない。金魚より赤い顔になったら退(ひ)け時、という意味で飼っているのではないとは思うのだけれど。
予算1500円
東京都世田谷区玉川2-22-13 新玉川酒店内