大田区池上にある実相寺は、法華経の名刹池上本門寺の分院。実相寺に隣接する池上梅園からはいつもひと足早く春が香り、探梅をしゃれこむ風流人を当て込んで時季には出店も軒を並べ、寒天みつ豆を商う村田商店は、梅が散り切るまで休む間もない。
日蓮宗の奥義は人集め、と笑っておっしゃるご住職の好意で、寺の大広間を借りて2カ月に1度、実戦的に演じて力をつけるべく、二ツ目の噺家を中心に催されている落語会が、たまごの会だ。古今亭志ん朝亡き後、一門の実力派志ん輔師匠が若手の指南役を買って出て、続くこと5年30回になる。志ん輔師匠は、朝太の二ツ目名で、NHKの子供番組「おかあさんといっしょ」のおにいさんを、16年務めたといえば分かりやすいだろうか。午後2時、前座の口開けで始めて噺を4席。一門の古今亭朝太、菊六、駒次、志ん八、桂才紫、一門ではないがこれに立川吉幸も加わって、ただいまバージョン2のメンバー編成。勉強会なので、師匠は浅い時間に一席伺ってトリはとらない。お開きともなれば、たまごたちをヒナに孵(かえ)そうという趣向で、「ひもの屋」で2次会が開かれる。しゃべりのプロたちがしばし、素人と遊んでくれるのだ。
人数がいつも不定なので、ひもの屋のくねくねした間取りがジャストフィット。二ツ目さんたちが代わる代わる、全員割り勘なのが釈然としない面持ちだが、それは出世後の話と諦めをつけて、お旦(旦那)とは申しがたい贔屓(ひいき)筋の間を、縫いながら酒を注ぎながら、笑えるような笑えないような話に花を咲かせる。師匠が座に混ざると、話がいっぺんに立体的になるのもご愛嬌。こうなるまでが大変、そうは思っていない二ツ目さん。飲み放題のコースで3000円(にしてもらっているのかもしれない)。ちなみにこの落語会、驚くべき謙虚さから、木戸銭1500円であることも付け加えておきたい。
予算3000円
東京都大田区南馬込5-42-3