社会
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社会 2009年03月07日 15時00分
5万円が最大1000万に FXの鍵「レバレッジ」とは
FX(外国為替証拠金取引)の特徴の1つに「レバレッジ」がある。レバレッジとは日本語で梃子(てこ)のこと。証拠金を積めば、その20倍から200倍の額の取引ができることをいう。円高ドル安のように、為替変動を読んで売買する。しかも、一定額以上の損は回避可能な取引というメリットもある。 レバレッジをシンプルに説明すると、5万円の証拠金で最大1000万円分の取引ができるということ。1ドル100円と仮定すれば、1000万円で10万ドル購入でき、1週間後にドル高に振れて1ドル103円になると30万円の利益になる。1週間で5万円が30万円になる計算で、利回り600%にもなる。「レバレッジ」を掛けることで、少ない為替変動でも大きな利益を獲得することができるのだ。 では、逆の場合どうなるか。ドルが下がり1ドル97円になった場合、30万円の損となり、証拠金の5万円の不足分25万円を追加証拠金として請求されるのか…といえば、否である。あらかじめ証拠金を越える損が出そうな場合、自動的に売りの注文が出せる仕組みがある。 つまり、証拠金の範囲で最大限の「レバレッジ」を使って利益期待値の高い取引をして、仮に失敗して証拠金がなくなっても、そこでゲームオーバーになるだけなのだ。まさに、ギャンブルに類似している。 もう一つの特徴に「スワップポイント」がある。「スワップポイント」とは、円など金利の高い通貨を買った場合、金利差が日々決済されて入金される仕組み。金利の高い通貨で金利の低い通貨を買った場合は、その金利差を日々差し引かれる。FX入門書で“スワップポイントは必要経費と考えろ”と書くのは、このためだ。 一時、「スワップポイント」を狙った取引が主流になった時期があった。欧米の金融関係者の間で「ミセスワタナベ」が話題になっていた時期である。 「ミセスワタナベ」とは実在の人物ではなく、日本の主婦トレーダーの総称だ。 サブプライムローン問題以前、恒常的な円安が続き、アメリカの金利が5%前後、日本の金利がほぼ0%だった。 ミセスワタナベは仮に100万円を証拠金に積み、2億円分の米ドルを購入。「スワップポイント」はほぼ5%。大きく変動がなかったため、「スワップポイント」による収益は年間1000万円、月に約83万円の不労所得を得ていた。 この手法はヘッジファンドが常用していた安い金利の円を借り、金利の高い地域に投資して高収益を得る、いわゆる「円キャリートレード」と同様の戦略である。 ミセスワタナベはこの戦略で、年間数兆円単位で円を売り、米ドルやポンド、オーストラリアドル、ニュージーランドドルなど高金利の通貨を買っていた。このため、欧米の金融界で話題になっていた。 FXに詳しい経済ジャーナリスト菅野進氏は、「その上、FXの手数料は0.05%程度と低いため、期待値は99.5%。宝くじは50%、競馬は25%を、胴元である日本宝くじ協会、日本中央競馬会が持っていってしまう。期待値はそれぞれ50%、75%と割に合わないギャンブルなのです。それに比べれば、FXは胴元が手持ちの掛け金の200倍までを無利子で融資してくれる。億万長者が何人出ても、なんの不思議もない」と言いきる。 サブプライム問題で欧米の金融機関やヘッジファンドが、円キャリートレードの巻き戻しで円買いが進み、1ドル105円の円高になったときも、円を買い支えたのはミセスワタナベだったといわれている。肥大化したミセスワタナベだが、FXの広がりと円高でも円安利益を追求できるFXの特性を象徴している。
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社会 2009年03月07日 15時00分
金融豆知識 ファンドの仕組み(1) 魅力ある商品づくりで資金集め
ファンドの運営会社は、投資家から資金を集め運用して利益を出す。 そこから報酬を引き、残った利益を投資家に出資率に応じて配当する。これがファンドの仕組みだが、ファンド運営会社が苦労するのは、投資家に魅力のある商品を作り出資しやすくすること。つまり、いかに資金を集めるかということだ。 そして、いかにローリスク・ハイリターンを実現するか。金融工学の技術や世界各地の情報を集め、日夜、商品開発に力を入れているのはそのためだ。
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社会 2009年03月07日 15時00分
永田町血風録 「早く民意問うべき」石破発言の波紋
平成21年度予算案が成立。自民党内で“麻生降ろし”の動きが激化。同党内では、内閣支持率が10%前後に落ち込んだ麻生太郎の下では衆院選を戦えないとの空気が広がっている。若手の間からは「ポスト麻生レースの号砲が鳴った」とも。 ベテラン議員の自民党元幹事長・武部勤は「解散・総選挙の前に新たなリーダーを立てて、こういう政権を目指す、このような政策を約束するというようなことになる」と、久しぶりに表舞台に顔を出し、麻生の退陣をこのように言い要求した。しかも武部が新たな議員グループ結成にも言及したのは、小泉純一郎との連携を想定したものだ。 この武部発言は元幹事長の中川秀直ら、どちらかというと麻生内閣では“ワキ”に置かれた重鎮の代弁でもある。 「あの連中は世論に迎合しようとしている人たち。要は政治の中心に自分さえいれればいい、という考え。かといって党を割って外に出るだけの勇気も自信もない。麻生にしてみれば、少々耳障りなだけに過ぎない」(ある麻生派議員) 農水相の石破茂も「早く民意を問うべきなんだから、だらだらと任期満了までいきました、というのはあまりよくない」と苦言を呈している。 早期の解散・総選挙が閣僚の口から出たことは、麻生の判断にかなりの影響を与えそうだ。しかも、「自公政権か、それとも民主政権かという政権選択になってくる」との見方を示しているあたり、かなり政局に踏み込んだ意見でもある。 石破の一連の発言に「チャンス到来」とばかりに、勢いづいているのが社民党だ。 社民党(福島瑞穂党首)は、このほど党本部で全国代表者会議を開き、総選挙と平成22年夏の参院選に臨む「選挙闘争方針」を決めた。 衆院(現在7議席)は2ケタ議席獲得に向け、比例代表で450万票と前回の370万票から大きな上積みを見込み、改選3議席の倍増を確保すると強気だ。 それによって、民主党中心の小沢一郎内閣での入閣をもくろむ。そうすることで、政治の世界で埋没してしまっている社民党の方針「憲法9条堅持」にスポットを当てようというのだ。。 「一日も早く総選挙をすべき」と、福島党首は門立ちをはじめた。与野党とも、政局がいつ来てもいいように備えている。 しかし、麻生は「自分で決める」と動じない。予算が通り、国民の関心事である給付金1万2000円が手元に届くまでは、選挙を口にするわけにはいかないのだ。
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社会 2009年03月06日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(5)
早川家は江戸時代から東京・京橋の北新堀で桝屋という袋物問屋を営んでいた。明治維新後、経営困難に陥り、明治9(1876)年に日本橋久松町へ移転したものの、久松町の店でも間口(まぐち)4間(けん)、奥行10間(1間は約1.8メートル)あったという。移転前にはさらに大きな店だったことが想像される。 政吉の代には袋物問屋ではなく、一閑張(いっかんばり)のちゃぶ台を製造販売した。一閑張は、机の木地に布を貼り表面から漆(うるし)をかける。政吉の考案によるもので、彼は一閑張ちゃぶ台の新案特許を取り、第4回内国勧業博覧会で銀賞を受賞したこともある。 政吉は器用で技術的才能はあったが、応揚(おうよう)な人柄で金銭方面などには、至って淡白だったという。 花子の実家は藤谷といい、東京・麹町の、やはり老舗の袋物問屋、大和屋だ。藤谷家は大和の出で、江戸時代には袋物問屋とは別に、肥後の細川藩をはじめ大名諸家に公金の御用達(今日の金融)を務め、苗字帯刀を許されていた。 勝気で何事にも積極的な花子は一家の推進力で、政吉はよく冗談に「ここの家は女房が主で亭主が従だな」と言ったという。才色兼備、そしてハイカラでもあったが、ミシン縫製業を始めると商才も発揮する。 当時、まだ非常に珍しかったミシンによる縫製業を花子がいち早く事業化した背景には、日本の総合商社の草分け、森村市左衛門との関わりがある。花子の実家、大和屋は前述のように細川家への出入り商人だった。 市左衛門の父にあたる人物は細川藩の武士だったが、細川家を離れて非常に生活に困っている時期があった。同藩に出入りしていて旧知の仲だった花子の祖父はこの時、森村一家の面倒をみている。
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社会 2009年03月06日 15時00分
森田健作氏マニフェスト発表
千葉県知事選への出馬を表明している俳優・森田健作氏(59)が5日、千葉市内でマニフェストを発表した=写真(カメラ・柳敏彦)。 4年前の前回知事選のリベンジとなるため、「敗れたらもう政治活動はしない」と不退転の決意で臨むという。 マニフェストは「アクアラインの通行料を800円に」「中学までの医療費無料化」など前回の内容を踏襲。共同制作者の明治学院大学・川上和久副学長は「誰が見ても分かる内容にした。知事が千葉のセールスマンになるという姿勢は変わらない」と話した。 さらに、民主党小沢一郎代表の公設秘書逮捕が選挙戦に与える影響について、森田氏は「私がなぜ完全無所属で出馬したかというと、千葉県が政党の陣地取り合戦の地にされるのが一番嫌だったから。影響は全くない」と否定。しかし後援会関係者は「自民から民主に傾いていた票がこれでまた分からなくなった。そうなると無党派層の票が多少はウチに流れ込むはず」と本音を漏らした。 自民と民主のつぶし合いは「青春の巨匠」に利するか。
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社会 2009年03月05日 15時00分
“神風”止む前に総選挙実施か
豪腕、正面突破に迷いなし。違法献金容疑で公設第一秘書が逮捕された民主党の小沢一郎代表。逮捕直後には、代表辞任説も飛び出した。麻生太郎首相がほくそえむシーンもあり、自民党内からは解散・総選挙をとなえる主戦論も出た。捜査状況の進展も絡み、政局は一気に動き出すことになった。 「民主党の鳩山由紀夫幹事長は逮捕の一報が入るとすぐ、『検察の陰謀だ』と激怒したがそうとは言い切れない。小沢代表は自民党にいた当時から、政治献金に絡む多くの疑惑が指摘されてきた。その度にクリアしてきたのは、それこそ“豪腕”だが、検察が長年ターゲットにしてきたひとり。ま、この時期を狙ったふしはなしとはしないが、検察の面子もかかってると見ていい」 そう言うのは、全国紙政治部記者。西松建設と小沢代表の腐れ縁も、こう明かす。 「西松建設は元自民党副総裁の故金丸信氏や経世会(旧竹下派)と深い関係にあった。小沢代表は竹下派七奉行のひとりで金丸副総裁からかわいがられ、実力者になった。西松建設が小沢代表と結びつくのは、ごく自然な成り行きだった」 自民党内からは今回の逮捕劇のほとぼりが冷めないうちに、解散・総選挙に打って出るべきだという強硬論が出ている。永田町関係者が言う。 「麻生首相の頭の中にもそれがあるのは確かだが、そう簡単ではない。自民党内からも逮捕者が出る可能性を否定できず、小沢代表が『違反はまったくない』と堂々としているからだ。逮捕劇は衝撃的だったが、小沢代表の態度も国民は強く印象づけられた。小沢代表のほうが、役者がはるかに上だったということだ」 それでも総選挙はあると見るのは、前出の政治部記者。 「自民党には、千載一遇のチャンスに変わりはない。一説では4月解散、投票日は5月のゴールデンウイークがどうか、という案まで出てきている。連休中に投票日を設けて投票率を下げるプランは、昨秋もあった。策略にたける自民党なら、冗談でなくなる可能性はある」 政権与党はお祭り騒ぎだ。麻生首相が就任当初の解散を渋ったがために、日々状況は悪化するばかり。内閣支持率ひとケタ台は目前に迫っていた。ようやく吹いた“神風”が止む前に…と解散を急ぎたくなる気持ちは分かるが、いったいだれのための選挙なのか。捜査の行方に注目するとともに、国民はシラけるばかりである。
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社会 2009年03月05日 15時00分
経済偉人伝 早川徳次(シャープ創業者)(4)
機屋(はたや)とは糸から生地(織物)を生産する工場のことで、そこで働く織り子(女工)は明治政府が殖産興業策による製糸場と同様、近隣の貧農出身者が主だった。 徳次にとっては新しい養母だが、年も近かったので徳次は“ねえさん”と呼んだ。後妻と熊八には次々と子供が生まれた。後妻は、熊八の不在の時などに徳次に辛く当たっていたが、子供が生まれるとさらにその度を増していった。 熊八がいないと、自分は食事していても徳次には与えない。徳次が空腹を訴えても返事さえしない。徳次を絶えず折檻(せっかん)するので近所の人が徳次をかわいそうに思い、折檻されていると止めに入ったりした。後妻は徳次が同情されるのがまた気に入らず、周囲に人がいなくなるとさらにひどい扱いをするのだった。徳次は常に養母の顔色を窺(うかが)って怯(おび)えていた。 ある冬の日、徳次は何かに腹を立てた養母から長屋の共同便所に突き落とされたことがあった。徳次の悲鳴を聞いて駆け付けた近所の人に、やっと引き上げてもらったものの、養母は今度は「臭い、臭い」と言って、共同井戸の冷水を頭から浴びせた。恐怖と寒さに震える幼い徳次に、休まる場所はなかった。 明治33(1900)年に作られた「花」(曲・滝廉太郎、詞・武島又次郎)の中では“春のうららの…”と隅田川の長閑(のどか)な様子が歌われた。丁度その頃、徳次は隅田川近くの長屋で辛い幼年時代を送っていた。その長屋から歩いて30分ほど、隅田川の向こう岸に徳次の実家はあった。事実を知っていたなら、聡明な徳次は逃げ帰ることもできたはずだった。 徳次は明治26(1893)年11月3日、父・早川政吉、母・花子の三男として東京・日本橋久松町42番地(現・東京都中央区)に生まれた。 この年、御木本幸吉は世界で初めて真珠養殖に成功している。毛沢東、市川房枝が誕生し、松平容保(まつだいらかたもり・会津藩最後の藩主)が死去した年でもある。
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社会 2009年03月05日 15時00分
永田町血風録 小泉の麻生批判が総選挙への号砲
自民党内で麻生の足の引っ張りっこが続く。中には「これで一気に政局に持ち込めばいい」と民主党などの野党と歩調を合わせ、自分たちで政局にしようとしているのが元幹事長の武部勤。「若手は予算の審議が終わったら、素早く選挙区に里帰りしろ」と尻を叩き出した。 武部が大喜びするのにはそれだけの理由がある。元首相の小泉純一郎が突然、自民党内で首相・麻生太郎の批判を始め、そして麻生内閣に強烈なパンチを浴びせたからだ。この小泉の動きに武部と自民党内大多数が「これで選挙への踏ん切りがついた」と小躍りした。 もっとも、この時期になぜ小泉が姿を見せたのか理解に苦しむ。一説では小泉は民主党の複数の幹部と通じ合い、郵政選挙の時、小泉寄りの発言をした候補を助けた、という。 民主党は口を開けば小泉批判をし、そしてその言葉の終わりに「衆院を解散して国民に信を問え」との“注釈付き”の注文を突きつけている。小泉は次の選挙には立候補しない。かといって、郵政選挙で当選した小泉チルドレンたちの応援はどうしてもやりたい。とくに小池百合子や片山さつき、佐藤ゆかりらを正面きって応援はできないので、麻生降ろしをやって援護射撃することで「存在をはっきりさせられる」と思っての蠢(しゅん)動だった。 武部はいってみれば、そのリーダー格。元幹事長という党内の立場は、ある程度プレッシャーもかけられる。国民生活と切っても切れない予算を速やかに国会を通して、外野でうじうじしている野党を尻目に、自民党内が一枚岩にまとまったところで衆院解散に打って出ようという腹だ。 「今はその最後のチャンスがめぐってきつつある。誰かに、とくに大物に麻生批判をさせて、それを引き金にして一気に政局へ。自民党は、そう考えているよ。このところ、民主党の小沢一郎代表が国防について、少々トンチンカンなことを言い出した。どうも与野党の主だった人の舌禍が政局を急がせている」とは公明党内の一部の議員の声。 その公明党はすでに政局を見込んで、各選挙区内の締め付けを着々と進めている。公明党は創価学会の地盤が、少子高齢化で緩んでいる。だから「なんだかんだいっても、政権与党にいるんだから、やはり自民党の動きに歩調を合わせていくのがベターだよ」(公明党幹部)。 自民党と公明党の実力者が発言するようになれば、選挙は間近だ。 そう、春の桜の季節の前には、「有権者のみなさん!」と呼びかける街宣車が走り始めるのではないか。(文中敬称略)
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社会 2009年03月04日 15時00分
金正日総書記 後継者問題で迷い?
金正日総書記(67)周辺が再びにぎやかになってきた。北朝鮮が長距離弾道ミサイル「テポドン2」の発射準備と見られる動きがある裏側で、後継者問題が注目を集めている。多くのメディアが金総書記の3人の息子を盛んに取り上げ、さながら“報道合戦”の様相を呈している。近く後継問題にケリがつくとの観測が広まっており、「金正日後」を見据えた動きは佳境に入ったようだ。 今月8日、北朝鮮では5年に1度の最高人民会議(国会に相当)代議員選挙が行われる。表向き、この“国会議員選挙”を経て「新・金正日体制」が発足する。 専門家は今回の選挙をがぜん注目している。北朝鮮では、後継者は代議員でなければならないと考えられているため、金正日総書記がその座を譲るのであれば後継者が選挙に立候補するはずと読んでいるからだ。 北朝鮮事情に詳しい評論家の河信基氏は、後継者が指名される可能性について「極めて高い。最近、北朝鮮メディアでは3代世襲を匂わせる論調が頻繁に出ている。金総書記が後継者として登場したときと状況が似ている」と話す。 礒崎敦仁・慶応大法学部専任講師(北朝鮮政治)は「2月に入って北朝鮮の労働新聞に妙なフレーズが掲載された」と指摘。それは「自分ができなければ子が行い、子ができなければ孫が行ってでも必ずやこの地に主体の強盛大国を建設する」との文言だったという。礒崎氏は「後継を暗示している」と解説する。 ほかにも北朝鮮では昨秋から今年にかけ、党・軍の高官の人事異動が活発になっている。これも「金総書記が息子を支えてくれるような後見人を充てていると考えられる」(礒崎氏)という。韓国情報機関トップも先ごろ、韓国国会の委員会で「北では親子3代に渡って世襲が可能とみられる」との見方を示した。 では、金総書記の3人の息子、正男氏(ジョンナム=38)、正哲氏(ジョンチョル=28)、正雲氏(ジョンウン=26)のだれが後継者になるのか。 正男氏は2001年、偽造パスポートを使い、「ディズニーランドに行きたかった」と日本に入国したところを退去強制処分になった“いわく付き”の人物。たびたびテレビカメラに姿を押さえられており、「露出しすぎている。神秘主義、権威主義がベースの北朝鮮にあって異質の存在。後継者としての資質がない」(前出・河氏)として後継レースから脱落したと考えられている。 となると、正哲氏か正雲氏のいずれかが後継者になるわけだが、2人の経歴はそっくり。ともに、金総書記と第3夫人・故高英姫氏との間に生まれ、スイスのインターナショナルスクールを出たとされている。 過去には、高英姫夫人の偶像化が図られたことで正哲氏が有力視されたことがあった。しかし韓国の通信社・聯合ニュースは先月、8日の選挙に「正雲氏が候補者登録したことが分かった」と報じた。正雲氏後継の可能性が急浮上しているわけだ。 しかし、そもそも後継に懸念がないわけではない。金正日総書記が先代の金日成氏の後を継いだ際には、約20年の年月をかけるなど周到な準備が図られたが、今回はあまりに時間がかけられていない。 この点について、河氏は「前回の後継は反対する勢力もあり慎重に進められたが、いまでは後継擁立事業はマニュアル化され、それほど時間をかける必要はなくなっている」とする。しかし、正哲氏、正雲氏のどちらを後継者に据えるかの最終段階で「金総書記に迷いがみられる」という。 盛んに動静が伝えられている金総書記は、健康問題をにらみながら決断を迫られているのだろうか。前例にならえば、選挙の約1カ月後に最高人民会議の第1回全体会議が開かれる。会議では通常、国の人事・予算などが決定されるが、単なる承認機関で実質的な権限はないと考えられている。今回、この会議が注目されるのは、ミサイル(北朝鮮は人工衛星と主張)発射準備との兼ね合いだ。ミサイルを会議にあわせて発射することは、国の新たな指導者に対する“祝砲”を意味する。そのため、発射時期は3月末から4月初旬が有力との見方がある。 周辺諸国に与える影響を考えると、後継問題を単なる「お世継ぎ」騒動と片付けることはできない。拉致問題の進展もかかっている。さらにミサイル発射も…。ますます北朝鮮から目が離せなくなってきた。○「穏健派」の正哲氏、「強硬派」の正雲氏 河信基氏は、正哲氏を「穏健派」、正雲氏を「強硬派」と区別する。 長年、金総書記の料理人を務めた藤本健二氏は、金総書記が正哲氏を「女みたい」と評したと証言している。一方、正雲氏は「顔も性格も父親に似ている」という。 専門家の間では、正式に後継者が公表される時期を、金総書記が70歳になる2012年が有力とみている。
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社会 2009年03月04日 15時00分
究極ゼロサムゲームの仕組み サルでもわかる!?FX入門
「あの4億円脱税主婦が教えるFXの奥義」という人を食ったような本が売れている。著者は2007年春、脱税の容疑で起訴、同年夏、執行猶予が確定した池辺雪子氏である。池辺氏は当時、約8億円の収入があったという。主婦がどうやって儲けたんだ、と驚いた投資家は多いはず。書店には池辺氏以外にも、何億円も儲けた主婦の本が並んでいる。本当にFXとはそんなに簡単に儲かるのだろうか。そもそもFXとは一体どんなものなのか。 FXとはフォーリン・エクスチェンジ。正確には外国為替証拠金取引のことをいう。文字どおり解せば、海外の通貨を証拠金を積んで取引すること。ドルやユーロを購入し、為替変動による為替差益で利益を得ることのように取れるが、仕組みは単純ではない。 外貨預金などのように現物の通貨を取引はしない。むしろ、金や穀物の先物取引のようにFXの会社のなかでの取引となる。先物取引と同様に、ある一定期間たったあとの売買を契約し、そのときの相場で決済が行われる。現在は円高が続くが、分かりやすくするため1ドル100円として説明しよう。 仮に100万円で1万ドル買ったとする。円高が進み1ドル90円になると、1ドルにつき10円の損。100万円分だから、10万円を損したことになる。 しかし、FXの場合、「ドル売り・円買い」からでもスタートすることができる。1万ドルで100万円持っていたことになり、1ドル90円になると、1万ドルが1万1111ドルになり10万円の儲けになる。 なぜ売りからスタートできるのか。この仕組みはFX会社が実際には、現物の通貨を取引しているのではなく、売りに対して、買いたい客をマッチングさせているだけだからだ。つまり、得をする人がいればその分だけ損をしている人がいる。FXとは、ゼロサムゲームなのである。 売買する通貨の組み合わせは、円とドルだけではない。円とユーロ、円とポンド、円と豪州ドル。それだけではなく、ドルとユーロ、ユーロと豪州ドルなど数え切れないぐらいの組み合わせが可能なのだ。 FXに詳しい経済ジャーナリストの菅野進氏は「初心者は、やはり円・ドルから入るのが分かりやすいでしょう。変動の激しいポンドなどはお勧めしません」と語る。 さらにFXを普及させている原因に、少額から参加できるという気楽さがある。株式の場合は取引の単位株があるので、一定の投資額がなければ始められないが、FXの場合、たとえば5万円からでも取引が可能である。 そこには、「証拠金」がかかわることになる。FXは先物や株式と同様、レバレッジという仕組みを活用できる。しかも自由度が非常に高い。 レバレッジとは日本語で梃子(てこ)のことで、FX会社によって異なるが、証拠金の20倍から300倍の取引が可能になる。 たとえば、100万円の証拠金で300倍のレバレッジで取引を開始すると3億円の取引をすることができる。1ドル85円でドルを買えば、約350万ドルを持つことになり将来、1ドル100円に戻れば、約3億5300万円になる。あっという間に、5300万円の利益を手にすることができる。何億円も稼ぐ主婦が現れるのも、このためである。しかし、レバレッジは儲かるときはよいが「リスク」もハンパではない。前述の菅野氏が言う。 「はっきり言って、FXはギャンブルです。そこには、ひと握りの勝者の背後に、累々(るいるい)たる敗者が横たわっています。しかし、宝くじなどに比べて、はるかに勝率のよいゲームであることは確かです」