レバレッジをシンプルに説明すると、5万円の証拠金で最大1000万円分の取引ができるということ。1ドル100円と仮定すれば、1000万円で10万ドル購入でき、1週間後にドル高に振れて1ドル103円になると30万円の利益になる。1週間で5万円が30万円になる計算で、利回り600%にもなる。「レバレッジ」を掛けることで、少ない為替変動でも大きな利益を獲得することができるのだ。
では、逆の場合どうなるか。ドルが下がり1ドル97円になった場合、30万円の損となり、証拠金の5万円の不足分25万円を追加証拠金として請求されるのか…といえば、否である。あらかじめ証拠金を越える損が出そうな場合、自動的に売りの注文が出せる仕組みがある。
つまり、証拠金の範囲で最大限の「レバレッジ」を使って利益期待値の高い取引をして、仮に失敗して証拠金がなくなっても、そこでゲームオーバーになるだけなのだ。まさに、ギャンブルに類似している。
もう一つの特徴に「スワップポイント」がある。「スワップポイント」とは、円など金利の高い通貨を買った場合、金利差が日々決済されて入金される仕組み。金利の高い通貨で金利の低い通貨を買った場合は、その金利差を日々差し引かれる。FX入門書で“スワップポイントは必要経費と考えろ”と書くのは、このためだ。
一時、「スワップポイント」を狙った取引が主流になった時期があった。欧米の金融関係者の間で「ミセスワタナベ」が話題になっていた時期である。
「ミセスワタナベ」とは実在の人物ではなく、日本の主婦トレーダーの総称だ。
サブプライムローン問題以前、恒常的な円安が続き、アメリカの金利が5%前後、日本の金利がほぼ0%だった。
ミセスワタナベは仮に100万円を証拠金に積み、2億円分の米ドルを購入。「スワップポイント」はほぼ5%。大きく変動がなかったため、「スワップポイント」による収益は年間1000万円、月に約83万円の不労所得を得ていた。
この手法はヘッジファンドが常用していた安い金利の円を借り、金利の高い地域に投資して高収益を得る、いわゆる「円キャリートレード」と同様の戦略である。
ミセスワタナベはこの戦略で、年間数兆円単位で円を売り、米ドルやポンド、オーストラリアドル、ニュージーランドドルなど高金利の通貨を買っていた。このため、欧米の金融界で話題になっていた。
FXに詳しい経済ジャーナリスト菅野進氏は、「その上、FXの手数料は0.05%程度と低いため、期待値は99.5%。宝くじは50%、競馬は25%を、胴元である日本宝くじ協会、日本中央競馬会が持っていってしまう。期待値はそれぞれ50%、75%と割に合わないギャンブルなのです。それに比べれば、FXは胴元が手持ちの掛け金の200倍までを無利子で融資してくれる。億万長者が何人出ても、なんの不思議もない」と言いきる。
サブプライム問題で欧米の金融機関やヘッジファンドが、円キャリートレードの巻き戻しで円買いが進み、1ドル105円の円高になったときも、円を買い支えたのはミセスワタナベだったといわれている。肥大化したミセスワタナベだが、FXの広がりと円高でも円安利益を追求できるFXの特性を象徴している。