「糸井の欠場前は『左翼・福留、中堅・高山、右翼・糸井』の布陣でした。この布陣に戻すのなら、糸井の欠場中に奮闘した中谷(将大=24)が弾き出されてしまう。中谷を使い続けるとすれば、彼が他に守れるのは一塁。そうなると、今、一塁を守っている原口(文仁=25)を引っ込めなければなりません」(22日時点/プロ野球解説者)
さらに、金本監督は二軍からドライチルーキーの大山悠輔(22)を昇格させた。大山は外野も守れるが、二軍では主に三塁を守ってきた。したがって、三塁手の鳥谷敬(35)もウカウカしていられなくなる。
チーム全体に緊張感を与え続ける金本采配が今季の好調さに結びついたわけだが、同監督は敵地・広島入りする直前の6月21日、坂井信也オーナー、四藤慶一郎球団社長らと“極秘”の食事会に招かれていた。
「オーナー、球団社長側が金本監督を招きました。話題は当然、ペナントレースの今後についてです」(球界関係者)
阪神球団は経営陣がチーム状況の報告を受ける会合を定期的に設けている。チームも好調なだけに会話も弾んだと思われるが、気になる点もあった。
「金本監督の契約任期が分からなくなりました。就任当初、任期に関する正式な発表はされませんでした。でも、『3年』と見る向きが強くあって」(前出・プロ野球解説者)
当時の金本監督は関西系テレビに何度か出演し、阪神ファンのタレントたちから「向こう2年は最下位でも構わないから、若手を育ててくれ。3年目に優勝してくれたら」なる激励も多く受けていた。これが不確定な3年契約説を広めた一因だろう。
四藤社長は一部の関西系メディアの取材を受け、金本監督と会っていたことを認めている。キナ臭い話題はなかった旨も強調していたが、「来季以降のチーム展望の話か?」の質問には言葉を濁している。
「金本監督が糸井のFA獲得をフロントに要請したのは、昨年8月のスカウト会議の席上でした。この時期、阪神に限らず、来季について話し合うのは珍しいことではありません」
球団社長が言葉を濁した理由だが、金本監督の今後、つまり契約任期の話も含まれていたのではないだろうか。3年契約だとしても、単なる3年ではなく、「3年目の契約は2年目の成績次第」との条件付きだったとすれば、四藤社長の言動にも合点がつく。
「シーズン途中に監督の去就問題が騒がれれば、たとえ任期延長であっても、チームはざわついてしまいます。その典型例が3年前のDeNAです。前半戦を好成績で終え、フロントは中畑清監督(当時)に続投を要請しましたが、DeNAは一気に失速してしまいました。来季も指揮官が代わらないとなれば、出場機会の少ない中堅、若手は使ってもらいたい一心で余計な力が入り、レギュラーは妙な安堵感を持ってしまいます」(前出・プロ野球解説者)
四藤社長はDeNAの二の舞を防ぎたかったのだろう。
リーグ戦が再開された23日、糸井は2安打と気を吐いたが、注目の大山は代打で起用され、空振りの三振。先発のメッセンジャーも初回から3点を失い、金本監督が注入したはずの“緊張感”は効果が見られなかった。経営トップとの会食が金本監督に余計な緊張感を与えたとすれば、皮肉なものである。
(スポーツライター・飯山満)