「長いプロ野球人生を振り返って…」の問いに、「(今季は)まだ70試合以上残っているわけだから、少しでもチームに貢献して、活躍できるように」と語っていた。常に前向きな井口らしいコメントだった。
「シーズン半ばで引退を表明するのは、メジャーリーグでは珍しいことではありません。メジャーを経験した新庄(剛志)氏もシーズン途中で引退を表明しており、井口と球団は正式発表のタイミングを見計らっていたのでは」(プロ野球解説者)
しかし、この井口の引退会見を知らされていた者とそうでない者がいた。ダイエー時代の恩師でもある王貞治氏にはかなり早く報告していたらしく、井口本人が「悔いのないよう、しっかり頑張ってのお言葉をいただいた」と話している。
対照的なのが、伊東勤監督だ。伊東監督は「突然のことで『えっ!?』という感じ」と話していた。
一般論として、選手が引退を決めたとき、最初に報告するのは、直属の指揮官だ。次年度以降のチーム編成に影響するのを避けるためで、今季の後半戦にしても、千葉ロッテがクライマックスシリーズ進出圏に浮上してくれば、「本拠地最終戦」を引退セレモニーとして提供できなくなる可能性もある。先の「知らなかった」発言を額面通りに受け止めれば、伊東監督は蚊帳の外ということになるが…。
「今季の千葉ロッテは下位に低迷(6月19日現在5位と7.5ゲーム差の最下位)しています。優勝圏外のままでは後半戦の観客動員数にも影響してきます。穿った見方かもしれませんが、井口の引退表明は営業的には大きなプラス材料です」(球界関係者)
チーム低迷の原因は、戦力補強の失敗に尽きる。また昨年オフ、伊東監督自身も4季のロッテ指揮官生活に納得ができたのか、進退を“白紙”にした状態でフロントと17年シーズンの話し合いに臨んだとも言われている。
「チーム低迷の敗因は伊東監督のせいではないとはいえ、今オフは首脳陣の入れ替えを含めたチーム改革がされるはず」(前出・プロ野球解説者)
井口が千葉ロッテのユニフォームを着たのは、09年。古巣帰還を選択しなかったのは、ダイエー球団要人としてそのスカウティングにも関わった当時の千葉ロッテ球団代表・瀬戸山隆三氏の存在があったからだという。
「当時、現役引退後についても何かしらの条件提示がされたと言われています。もっとも、瀬戸山氏はすでにロッテ球団を退社していますが」(前出・関係者)
瀬戸山氏の退社後も、井口は精神的支柱としてチームを牽引してきた。引退会見では今後について「全く考えていない」と語っていたが、これから着手されるチーム改革に携わって行く可能性は捨てきれない。
(スポーツライター・飯山満)