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加熱する米中貿易戦争の裏に蠢く「薬物被害」の実態

 米トランプ大統領は8月16日の閣僚会議で、中国製の高依存性鎮痛剤の合成薬物の被害について「戦争の一種だ」と語った。

「トランプ氏は、ジェフ・セッションズ検事総長に対して『中国とメキシコから出てくるフェンタニルを調べてほしい、いかなる法的処置を取ってしても流入を止めるべきだ』と迫っています」(在米日本人ジャーナリスト)

 米国におけるフェンタニルの輸入元は大半が中国だ。ロサンゼルスの保健当局者は「街では中毒者が至る所に見られ、他のオピオイド(強い鎮痛作用を示す物質の総称)よりもフェンタニルでの死亡事故が多発している」と警告しているほどだ。

 米国の疾病管理予防センターの公表資料によると、2017年に7万人以上が薬物の過剰摂取で死亡した。そのうち68%がオピオイドに関連する。米国では一般的にオピオイドはフェンタニルと呼ばれる成分から合成され、フェンタニルはヘロインの50倍、モルヒネの100倍の鎮静作用がある。

 「米国が、中国産の薬物輸出を戦争の一形態とみなしたのは、今回が初めてではありません。14年の米軍国防白書には、中国から『薬物戦』や『文化戦』(孔子学院などによる日米離反工作)など従来の攻撃方法でない戦略があると警鐘を鳴らしています。米軍特殊作戦司令部も同じく14年に戦略白書『非慣習的戦争への対応』を発表していますが、そこには『薬物戦』も一種の戦闘形態であると記されています。フェンタニルは死に至る高い中毒性により、軍事目的の化学兵器とみなされているわけです。何しろかつて毛沢東は、軍を増強させ、必要な兵器や資金を調達するために、アヘンを育てて販売していたことが知られていますからね」(同・ジャーナリスト)

 16年10月のBBCの報道によると、多くの中国企業がフェンタニルよりも100倍強力で、米国や日本で指定薬物扱いのカルフェンタニルを輸出していることが明らかになった。米国は早期に中国に規制を求めていたが、17年2月に規制されるまで、公然とインターネットなどで販売され、大量に流通していた。

 薬物乱用の影響はもう1つある。過剰摂取による労働力の衰退だ。プリンストン大学の経済学者アラン・クルーガー教授によれば、米国では労働力人口が近年低下していると指摘し、その原因としてオピオイド中毒によって、主に25〜54歳の青年‐壮年期といった労働力の中核層の20%が労働人口から離脱したことに起因していると公表した。
 米国が中国に「貿易戦争」を仕掛ける前に、中国は先制攻撃をしていたわけだ。

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