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連載ラノベ 夢ごこち(2)

 吉原君と初めてデートをしたのは、夏休みに入ってから。けど、吉原君は剣道部の練習があって、夏休み中はあまり会えなかった。二学期が始まって学校が落ち着いてきた今日が、四回目のデートだ。

 夏休みのデートの時、吉原君は、白い綿のシャツに、紺色のずぼんをはいてきてくれた。短い髪の毛も、整髪料で整えていた。女の子に積極的に話しかける男の子たちよりも、ぜんぜん、すてきに見えた。

 でも、吉原君といっしょにいるときは、まだ、何をしゃべればいいのか、わからない。

 吉原君も、よく下を向いたり、黙り込んだりしてしまう。けど、吉原君は、いつも私を気づかって、いろいろなことを話してくれる。さっきも、階段道で、「大丈夫」って、何度も聞いてくれた。

 それに、吉原君は、私が何を言っても、私の心を感じ取ってしまう。
 「ごめん、やっぱり、興味なさそうだね」

 今も、すまなそうな顔をしてくれた。

 吉原君のせいじゃないのに。今日は生理で体調が悪いだけなのに。

 けど、「ごめん」って、あやまってくれた吉原君に、なんて言えばいいのかわからない。

 吉原君に、崇徳院と西行の話の続きを聞いてみた。
 「問答をして、それから、どうなったの」

 吉原君が、一瞬、驚いた顔をした。けど、話してくれた。
 「西行は崇徳院に成仏を願うんだけど、崇徳院は皇位を奪われたことを恨んでて、すでに魔道に身を染めてたんだ」

 魔道って、悪魔の道のこと。
 「…魔道」

 つぶやいたら、ちょうど相づちを打った形になって、吉原君が、さっきよりも楽しそうな声で説明してくれた。
 「うん。それで、崇徳院は西行の話に耳を貸さずに、手下の怪鳥を呼び集めるんだ。怪鳥に、『天下に大乱を起こせ』って、厳密に言うと『平家を滅ぼせ』ってことなんだけど、命令するんだ」

 「…怪鳥」
 「うん」

 吉原君が鼻をかいた。どうしたのだろう。

(つづく/竹内みちまろ)

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