なにしろでかい。直径は12センチと普通ながら、その高さはなんと5センチほどもあり、まさに極厚。しかも注文を受けてからじっくりと揚げるため、アツアツのうえにフワフワサクサクなのだ。具は玉ねぎが主。通常は薄く切られるのだが、こちらのは幅1センチほどあり、噛みしめるとじんわり優しい甘さが広がる。このかき揚げがあっさりめのお汁にベストマッチなのだ。かなりボリューミーながら、揚げたてのため、くどさはまったくない。サクサクズルズル、あっという間に完食してしまった。
それにしてもこのかき揚げ、立ち食いそばという食べ物としては、いい意味でオーバークオリティ。なぜにこんな立派なものを出すようになったのか?
「まぁ揚げたてが一番美味しいからね」
休むことなくかき揚げを揚げながら、店主の斉藤さんは、このかき揚げを作り始めた理由を語ってくれた。午後2時半と、飲食店にとってはアイドルタイムに取材をしたのだが、それでもお客さんがひっきりなしに入ってくる。昼時には近隣のオフィスから、かき揚げそば目当てでお客が押し寄せるとも聞く。普通なら、かき揚げは揚げ置きにして回転をよくしようと考えるだろう。しかし斉藤さんはそれでも揚げたてにこだわった。「美味しいから」という、シンプル極まりない理由。しかしそれこそが、この店が多くの常連さんに愛されている理由なのだろう。
“加賀”の大きなかき揚げには玉ねぎだけでなく、お客さんに喜んでもらいたい、という斉藤さんの愛情がたっぷりつまっているのだ。
(本橋隆司)
「加賀」
東京都渋谷区本町1-2-3
営業時間:7:00〜20:00
定休日:日曜・祝日
かき揚げそば:440円