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〈目からウロコの健康術〉 伝統の食文化に隠された効果とは!?「医食同源」で健康長寿に

 世界保健機関(WHO)が2018年に発表した統計によると、日本人の平均寿命は84・2歳。女性のみが87・1歳、男性のみが81・2歳で、現在、世界一長生きの国となっている。理由は乳幼児の死亡率が低くなったことや、最近では成人病検査などのチェック機能が広まったことなどが挙げられる。

「一昔前に比べると、バランスの取れた伝統の食生活になった事が理由として挙げられます」と、WHOは結論付けている。

 しかし、循環器疾患予防国際共同研究センター長の家森幸雄氏は、自著『ついに突き止めた究極の長寿食』(洋泉社)の中で、こう述べている。

「毎日の一食一食が我々の体を作り、いかに食生活が命を支えているかを考えてほしい。外食中心の美食に走り、コンビニ食、市販のおにぎり、ハンバーグなどで毎日、昼食や夜食を済ませる若いサラリーマンや学生、フリーターたちが、現在の平均寿命まで到達するかは難しいと言わざるをえない。医食同源の精神をしっかりと心に刻んでいただきたい。そう強く思います」

 非業の死を遂げたとされる戦国武将の織田信長が、大のお気に入りであった祝杯や宴席などで舞ったとされる「幸若舞」の演目「敦盛」の中で「人間50年、下天の内を比ぶれば夢幻のごとくなり」の一節がある。戦国時代の寿命は身分の高い人でさえ50歳程度だったといわれる。当時の詳しい統計はないものの、貧しい農民たちは、明治初期まで30歳ほどで寿命を終えたと推測されている。

 それが1950年以降、日本人の寿命は一気に世界第1位に駆け上がるのだが、その理由は医療技術の向上だけではないはずだ。

 日本には昔から「医食同源」という言葉がある。つまり、「病気を治療するのも、日常の食事をするのも、ともに生命を養い健康を保つために欠くことのできないもので、源は同じ」と言うこと。もともとは古くから中国にある、体によい食材を日常的に食べて健康を保てば、特に薬など必要としないという“薬食同源”の考えを基にした造語で、1950年以降に日本で流行し、広まったものとされる。

 女子栄養大学の准教授・高木千賀子氏はこう語る。
「日本に広がった“医食同源”という言葉がありますが、風邪などを引きやすい人は、食事において好き嫌いが多いと言います。また、特に野菜を摂らない人は、ビタミンやミネラルが不足しており、この2つは、たんぱく質、脂質、糖質の3大栄養素に加えて5大栄養素で、身体の微調整をする役割を果たしている。普段から元気な人は、これらを万遍なく摂って何でもおいしく食べられるので、病気もしにくい。1950年代以降は、若いうちからそういったバランスの取れた食生活が自然と身についたのでしょう。ここ数年は“食育”という言葉を耳にしますが、何をどう食べるか、親から子供に伝え、引き継いでいくことが大事なのです」

 世界に目を向けてみると、かつてはペルーやパキスタン、ブルガリアやジョージア(旧グルジア)などに長寿の郷があったという。後者はコーカス地方であり、ヨーグルトの生産国として有名なところで、長寿の民が集まる地域だった。

 なぜヨーグルトが長寿に繋がるのか。このあたりの事情について、前出の高木准教授はこう説明する。
「ヨーグルトに含まれる乳酸菌は、腸内の環境を整え、便秘を防いだり、免疫力を高める効果がある。他に、コレステロール値を下げるので、健康長寿に繋がっていたと言われます。これらの地域では、ヨーグルトの他に発酵食品のチーズなども上手に食べている。現在は日本でも、さまざまなヨーグルトが手に入りますが、注目されているのはカスピ海ヨーグルト。やや高価ですが、コレステロール値を下げ、がんを防ぐ効果もあると人気です」

 しかし、食生活が西欧化している昨今、ブルガリアでさえ、ヨーグルト派から外れてバターや白パンなどを多く食べる人が増え、心筋梗塞などに罹る率が高まっているといわれる。やはり現代に至り、長寿地域を維持することは難しさが伴うようだ。

 日本では2012年9月時点で、すでに100歳以上になったお年寄りが5万人を超え、昨年9月に発表された厚労省の調べでは、始めて6万人を超えた。政府が’63年に統計をとりはじめた当時は156人だった。それが、現在のような長寿世界一を更新し続けるまでになったわけだが、今後もこの状態を維持したいものだ。

★日本食は大いに健康的
「先進国の代表でもあるアメリカの平均寿命をみると、
6年前のデータでは男性が75・2歳、女性が80・4歳で、日本と比べ、その差は歴然としています。一度でもアメリカへ行ったことがある人なら分かると思いますが、レストランで出される食事量はけた外れに多い。ステーキは大きく、ハンバーグやピザも山盛りだし、ファーストフードの飲み物も甘いものばかり。“質より量”を求めるといっても、あれでは平均寿命は延びません」(医療ライター)

 都内で総合医療クリニックを営む医学博士・遠藤茂樹氏は「日本の食文化」の重要性を次のように語る。

 「もともと米国は日本とは食文化が違います。過食はカロリー過多になりがちで、動脈硬化や糖尿病などの成人病の原因にもなる。当然がんにもなりやすく、死亡率が上がっても不思議ではない。その点、日本食は塩分などを調整しながら食すれば、大いに健康的といえます。ただ心配なのは、今の若い人たちが外食中心の生活になっていること。彼らが年老いた時、今のような健康長寿を果たして保てるか、心配になります」

 最近は長寿の国の日本食が世界で注目されている。日本料理店や寿司店が人気で、各国で出店数がうなぎ登りに増え、ヨーロッパや中国でも広がっている。

 だが、その一方で、この半世紀ほどで農作物、食肉、加工食品など、外食すれば化学合成物質を多く使った“美味しいもの”が溢れるようになった。ゆえに子供たちの間では、以前にはほとんどなかった喘息やアレルギー、アトピーなどの病気が増え続けている。

 これらの病気の原因は大気汚染、水質汚染などの環境変化、そして、食生活の悪化に起因しているといっても過言ではない。

 本来、食べ物は食べた人の身体を慈しみ、養うものであり、老化や病気を遠ざける妙薬的なもの。それがつまり“医食同源”ということ。体にいい食べ物を常日頃から意識的に食べ、これからも健康でいたいものだ。

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