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浅倉カンナが見せた王者としての美しきプライド

 5月6日に行われた総合格闘技イベント「RIZIN10」において、味わい深いシーンが繰り広げられた。

 第10試合に登場した女子スーパーアトム級GP王者・浅倉カンナは自らの最大の武器であるタックルを幾度となく放った他、スタンドでの打撃、組んでからの投げを駆使。終始、対戦相手のメリッサ・カラジャニスをコントロールし、ペースを渡さなかった。一本こそ取れなかったものの、2ラウンドには腕ひしぎ十字固めを決めるなど圧倒した。技術的にも精度の高さを見せつけた内容だった。

■RENAの要求への対応は
 試合後、リング上で勝者の浅倉がマイクで話し終えるともう一人、ロープをまたいだのはリングサイドで試合を見守っていたRENAだった。昨年末、トーナメント決勝で浅倉に敗れており、「トーナメントではなくワンマッチで」と再戦を要求。観衆の前で直接、浅倉に挑戦状を叩きつける格好となった。

 これに対し浅倉は「追われる立場になり、RENAさんの気持ちが分かった」とRENAをたたえたが、「(RENAが)一戦も行わずに再戦は考えられない」と笑顔でこの要求を一蹴。RENAは7月に行われる立ち技の大会への出場が決まっているとして、浅倉に食い下がった。それでも浅倉は「考えさせてください」と即答を避けた。

 日本の格闘技界の大きな柱として、地盤を固めてきているRIZINではあるが、これまで出場選手の体重超過や不可解なドタキャンといった、理解しがたいハプニングがしばしば起きている。マッチメイクに関しても、一部有力選手をプロテクトするかのようなカードが組まれ続けていると感じるファンは少なくないだろう。同時に、ネームバリューのある両者の再戦は集客やテレビ視聴率の面から見ると、すぐにでも「行われるべき試合」だ。

 いずれにしても今回の浅倉へのRENAの再戦要求は、どこかこれまでのRIZINと同様に「不自然さ」が漂うものだった。

 ■王者として日本の格闘技を見据え
 だが、王者・浅倉は首を縦に振らなかった。RENAがMMAを一戦でもこなすように求め、はにかみながらも頑なにこの段階での再戦を拒んだ。確かに女子格闘技のシンボルであるRENAの戦績にこだわる必要はない。挑戦権は持ち合わせている。功労者としての経緯を踏まえると「即・リマッチ」も許される存在であることは間違いない。

 ただ、二人のやり取りの冒頭に浅倉が口にした「ファイターとして」という短い言葉に多くの意味が込められていた気がしてならない。そこには相手を尊重しつつ、自らの王者としての誇り、そしてRIZINという興行への想い、何より格闘技への純粋なリスペクトが伝わるものだった。

 もう一つ、段階を踏んでのリターンマッチこそ、ファンにとっては最高のシチュエーションだと考えたのかもしれない。無論、RENAにとってもどちらのストーリーが美しいものであるかは言うまでもない。

女子格闘技界を引っ張る二人を包んだ空気には紛れもなく、今後のRIZIN、そして日本のMMAに「なくてはならない姿」があった。そして王者・浅倉カンナが見せた振る舞いは、日本の格闘技界をさらに発展させる上で必要なものだったのかもしれない。(佐藤文孝)

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