発表会ではまず、2017年の総来場者数が17,300人となり、2018年最初の大田区総合体育館大会を4,000人(超満員札止め)で終えたこと、4月からサンテレビと北陸放送でのレギュラー放送が開始すること、ブシモのゲーム『しろくろジョーカー』の実写CMに選手を起用し制作することが報告された。また、「プロレスラーのように話し上手になってもらいたい」(木谷オーナー)という狙いもあり、4月から選手がパーソナリティを務めるKNOCK OUT公式ラジオ(響ラジオステーション)の開始されることと、ぴあとのコラボでファンクラブの開設も決定した。
続いてKNOCK OUTの2018年、年間スケジュールを発表。
4月14日 カルッツ川崎
5月3日 エディオンアリーナ大阪・第2競技場
6月8日 後楽園ホール
8月19日 大田区総合体育館
9月8日 エディオンアリーナ大阪・第2競技場<NEW>
10月上旬 都内
12月上旬 都内大規模会場
全大会で、2.12大田区大会で好評だったPeriscope(ツイッターのタイムライン上でのライブ配信)にて無料ライブ配信が行われる。2月大会ではタレントの有吉弘行など、芸能人や著名人もPeriscopeで観戦してツイートしており、KNOCK OUTの公式アカウントのフォロワーが1日で4,000人も増えたというから驚きだ。
大阪大会が増えたことについて、花澤代表は「サンテレビさんの放送が決まったことや、2020年の会場問題なども考えて、大阪はやるべきだと判断した。当然、名古屋など他の地域での開催も考えている」とコメント。地方大会もKNOCK OUT本編として開催するとし、昨年好評だった『ROAD TO KNOCK OUT』シリーズも行うとのことから、さらに日程は増える可能性が高い。木谷オーナーも「今は毎月1回でも忘れられてしまう時代。場所や内容を変えて月2回開催できるようになりたい」と大会数増加に意欲を示した。
そして、2月大会で石井一成が提唱していた、初代フライ級王座決定トーナメントの開催が6.8後楽園大会から開幕することが決定。ライト級の白いベルト、スーパーライト級の赤いベルトに続いて、黒いベルトもお披露目された。小野寺プロデューサーは「最軽量階級であるフライ級は、石井、タネ(ヨシホ)、能登(龍也)といい選手がたくさんいる。参加選手は6人が決定。残る2選手と交渉中」と明言。さらに、10月からライト級アジアトーナメントの開催が発表され、スクリーンに日本、タイ、韓国、中国の4か国の国旗が映し出されたが、木谷オーナーは「小野寺さん!もっとアジアには国があるでしょう。アジアトーナメントと名乗るなら7、8か国出さないと。僕は弱い国の選手が出てもいいと思う」と注文。小野寺プロデューサーは「交渉します」と即答した。
ここで、4月大会で現ムエタイ世界王者・ヨードレックペット・オー・ピティサックとの対戦が決定した、初代ライト級王者・森井洋介が登場。森井は「この試合に早速タイトルをかけてベルトの価値を高めたい」と発言。小野寺プロデューサーは困惑の表情を浮かべたが、木谷オーナーが「チャンピオンが言ってるんだから、交渉してください」と森井の気持ちを後押し。タイトル戦実現に向けて前向きに交渉することになった。森井は「僕はポイント取りのゲームは苦手なんで、勝つとしたら倒してだと思うんで、世界王者を倒す瞬間を見に来てください」と力強く語った。また、木谷オーナーはタイ人の名前の長さについても言及。「ヨードレック…ペット…。ヨードレックの方がいいですよね。ミルコ・クロコップだってリングネームで変えたわけで、そこは覚えやすい名前を考えてもいいと思う」こちらも今後交渉していくことになった。
最後に行われた質疑応答でも、木谷オーナーの持論は止まらず。
KNOCK OUTにとってライバルになる団体について、「RIZINさんでもK-1さんでもなくONE Fighting Championship(シンガポールの総合格闘技団体)ですね。あそこの代表のビクターは凄いですよ。今度立ち技をやるという話もあって、脅威だと思ってます」とコメント。新日本プロレス買収時に国別対抗戦であるワールドリーグ戦の復活を提唱していた木谷オーナーだが、アジアトーナメントから国別対抗戦に発展する可能性について質問が飛ぶと、「まさにその通りで。日本対他国というのがどのジャンルでもいちばんわかりやすい。いろんな国の国旗が掲げられることが重要。プロレスでは実現が難しかったけど、キックならできると思います」と語った。
最後に今後の課題については、
「KO率が下がってきたのが気になりますね」とした上で、
「段々勝ちに走って来ちゃったかなと。でも、森井選手の『ポイント取りは苦手なんで』という発言。これはいいですよね。僕の中ではKO勝ちがいちばん評価が高いです。次はKO負けですよ。その次が判定勝ち、判定負けの順番です。だってKO負けするというのは、前に出てってるからされるんだと。もちろん判定でも本当に満足できる面白い試合もありますよ。昨年12月の両国でも小笠原瑛作選手の試合は引き分けでも、彼のKOしようという気負いが見られて面白かった。お互いに攻めて、結果引き分けになるのはいいんですよ。でも、ポイントを取って後は流してるなと見えた瞬間、冷めると思うんですよね。一般の人はやっぱり倒す倒されるなんですよ。格闘技見たことない人は判定のポイントがどこかなんて、わからないでしょう。ポイントにこだわったり、ルール変更の多い競技ほどダメなんです。倒したら勝ち、倒れたら負けってわかりやすいじゃないでしょ。初見の人でもスゲェなとなるわけで。だからイベント名もKNOCK OUTなんですよ。ここはKOを目指す団体なんだって誰が見てもわかる。団体名に説明が必要じゃダメなんです。だから正直言って、判定が続く選手はあまり出てほしくないですね」
と最近の大会への苦言を混じえながら、改めてわかりやすさの追求と、KO至上主義を推進していくことを断言。これには会場に集まったファンからも拍手が送られた。
KNOCK OUTは、格闘技業界では異例といえる、選手が“手売り”をせず、試合毎にギャランティが支払われるシステム。これは木谷オーナーの「手売りをしているうちはプロとは言えない」という方針のもと、旗揚げ時から徹底されている。「ハッキリ言って赤字です」と木谷オーナーは現状を明らかにしていたが、キックに可能性を感じているが故の投資なのは、言うまでもない。森井や那須川天心のように、木谷オーナーの期待に応えられる選手が増えていけば、KNOCK OUTのみならず、キック界の未来も明るくなるだろう。
取材・文・カメラマン / どら増田