起訴状などによると、デソト被告は12日夜、日本人観光客で溢れるグアムの繁華街タモンで車で通行人を次々とはね、車はABCマート前に衝突。車を降りた被告は居合わせた観光客を次々とナイフで刺した。
いまのところ薬物反応などは確認されていないが、裁判所は被告の精神鑑定を実施することを決定した。
現地の地元民はこの残虐な事件をこう見ている。
「東南アジアの風土病『アモック』が犯行の原因だったのではと噂されている。それは、スペイン系の名前からも彼が原住民のチャモロ人ではなくフィリピン系の出自だったことに起因する。グアムの人種の約半分はふくよかな体格のチャモロ人。二番目に多いのが出稼ぎに島に渡ってきたフィリピン系で人口の約4分の1を占めている」(グアム地元民)
犯行の動機だったと噂されるアモックとは一体何なのか。
メンタルヘルスの専門家・中嶋泰憲氏が生活総合情報サイト『All About』で紹介している記事を抜粋すると、心の病気のなかにはその人の属する社会、文化の影響によって特定の地域にのみ見られる文化依存症候群と呼ばれるものがあるという。その代表例として「東南アジアの心の風土病、アモック」がある。「マレーシア、インドネシア、フィリピン。近代化される以前の部族社会では、アモックと呼ばれる、人を無差別に殺傷する事件が起きていました」。
アモックの特徴として「男性にほとんど限られる」「アモックを起こす前に、辛かったり、体面を失うような出来事がある」「取り押さえられてアモックが終わった場合、虚脱状態になり、後で正常にもどった時、アモックが起きていた時の記憶が失われている事が多い」などが挙げられるという。
法廷では「Yes, sir」と発したのみで、終始うなだれていた被告の様子とかなり重なる部分が多い。しかし、中嶋氏は同時に「社会が近代化された現在では、アモックはほとんどなくなりました」とも指摘している。
知人からの評判は悪くなかったというデソト被告。犯行の動機はいずれ裁判で明らかになって行くことだろう。(明大昭平)