住民の方に尋ねると、そう教えてくれた。JR横須賀駅のホームから外に出るまで階段が一つもなかったので、改札口を出たところで「軍港だったからですか」と尋ねた。その質問への回答だ。
横須賀は、房総半島の対岸に位置し、東京湾に突き出ている。首都東京からの距離も近く、幕末から、国防の拠点として栄えてきた。現在も、JR横須賀駅ホームから、駅の外にある壁と金網越しに、海上自衛隊の船の主砲が見える。いわば、現役の「戦闘艦」だ。記念艦として保存されている戦艦「三笠」を見学するのとは、違った感慨が湧く。
【ヴェルニー公園】
横須賀駅の目の前にあるのが、東京湾に面したヴェルニー公園。幕末の時代、国内各地に造船所が造られた。その中で、のちに海軍工廠と改名される「横須賀製鉄所(造船所)」は当時最大級の規模を誇った。江戸幕府とフランスとの間で、日本の海軍力増強が急務という見解が一致し、フランス人技師ヴェルニーらが、横須賀製鉄所建設のため来日した。ヴェルニー公園の中には、ヴェルニー記念館がある。また、園内には、ヴェルニーの胸像と、幕末に勘定奉行や軍艦奉行などを務めた小栗忠順(おぐり・ただまさ)の胸像がある。
【ヴェルニー記念館と、軍港めぐりツアー】
ヴェルニー記念館に入った。多くの資料が展示されていた。横須賀造船所1号ドック(現・米軍基地内)を見渡す、どこか浮世絵を思い起こす日本式の絵図や、1871年にフランス海軍が測量した、そのまま地図帳に転載してもおかしくない海図など。現在、ヴェルニー公園付近の桟橋から出発するクルージングツアー「軍港めぐり」では、米海軍の原子力空母や、自衛隊の港に停泊する南極観測船を見ることも可能らしい。
【どぶ板通り】
ヴェルニー公園を抜けて、国道16号線を横断すれば、「どぶ板通り」。かつては、ドブ川が流れていた。「どぶ板通り」に「スカジャン」を売る店があった。「スカジャン」は、米軍兵が軍用の生地を持ち込み、和風の刺しゅうを入れて記念に持ち帰ったことが発祥という。現在の「どぶ板通り」は、かつてのような繁雑さはないのかもしれないが、若者たちや米軍兵で賑わっている。歩いていると、「横須賀海軍カレーパン」の看板が見えた。注文を受けてから揚げ始めるのは、その都度焼くヨコスカネイビーバーガーと同じ。
【よこすか海軍カレー】
「どぶ板通り」の先にあるのが横須賀の大通り。「三笠ビル商店街」もここにある。大通りから脇にそれた場所にあるデパートに入り、レストランで、旧日本海軍のレシピを再現した「よこすか海軍カレー」を頼んだ。あっさりしていてマイルドという印象があったが、ここの「よこすか海軍カレー」は、スパイスが効いていた。ジャガイモやマッシュルームなど具も豊富。店ごとに工夫が凝らされているのかもしれない。(竹内みちまろ)