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リアスポかわら版 「歌手に歴史あり」 演歌歌手・市川由紀乃編 諦められぬ未練と決意

 歌手生活を休止し、天ぷら屋「新宿つな八京王店」でアルバイトを始めた市川。担当はホール。料理を客席まで運んだり、レジを打ったりしていた。

 駆け出しの役者や若手お笑い芸人がアルバイトで生計を立てている話は、よく聞く。だが、市川は歌手だった過去を店の誰にも言わなかった。芸能界から完全に身を引く覚悟を決めていたのだろう。
 休止中4年半のうち後半の2年間、ここで働いた。その2年目が終わりかけた頃、市川は接客中に粗相をし、客に多大な迷惑をかけてしまった。鍋島真由美店長と一緒に相手先へ謝罪しに行った帰り道。市川の様子を見かねた店長が尋ねた。
 「何か、心配事でもあるんじゃないの?」
 その言葉を耳にした市川の目から、涙が一筋、二筋とこぼれ落ちた。

 「実は…」。自分が元歌手であること。芸能界から逃げ出したこと、それでも歌への未練を断ち切れないこと…心の不安を初めて他人に打ち明けた瞬間だった。
 「もう一度、歌の仕事したいんでしょう? だったら頑張んなさいよ」。
鍋島店長の言葉に背中を押された市川は「諦めずに頑張ろう」と、歌への決意を新たにした。
 一方、演歌界でも市川の実力を惜しむ声は根強く、特に師匠で作曲家の故・市川昭介を中心に復帰への道筋を探っていた。
 そうした両者のタイミングが奇跡的にマッチしたのだろう。紆余曲折の後、06年10月25日に市川は師匠の手による新曲「海峡出船」で5年ぶりに芸能界へ復帰した。それは師匠の逝去から1カ月後のことだった。
 活動再開から3年。新曲「花の咲く日まで」は己の原点に立ち返った曲だと市川は語る。
 「遠くから差す光に向かって何の迷いもなく歩き出せる…という曲です。その意味でも、このお店は休んでいた私を支えてくれた。ここがあったからこそ、今の自分があるんです」(おわり)

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