しかし、その藤浪を引き当て、13連敗を免れた。先発ローテーション入りなど戦力アップはもちろんだが、異例の新人選手のグッズ販売など営業面でもその効果をもたらせた。
その藤浪の後輩である森友哉(捕手=大阪桐蔭)は、『打のナンバー1』と評されている。
「藤浪の『恋女房』とも言っていいでしょう。何よりも、『打てる捕手』は稀少です。昨年のドラフトで高校生捕手を指名しなかったプロ野球チームは、森の指名を念頭に入れていたとも言われています。阪神サンで『藤浪−森』のバッテリーが復活したら、それはそれで1つのセールスポイントになるでしょう(笑)」(在京球団スカウト)
阪神も森を1位指名リストに入れているそうだ。また、原巨人も「阿部(慎之助)が元気なうちに、後継者を」と熱視線を送っているそうだが、次世代の正捕手候補・山下斐紹のいるソフトバンクも『森入札』の可能性があるという。
「森の最大の魅力は、リーダーシップの取れる性格ですよ。野球の才能だけではなく、チームをまとめる力も持った大型捕手はなかなか出て来ない」(在京球団スカウト)
だが、その森はプロ入りについて慎重な姿勢を見せているそうだ。
「今年の1月くらいですかね。『社会人野球に興味がある』と言い始めたんです」(学校関係者の1人)
社会人野球に興味を持ち始めた理由は、いくつかある。1つは高校野球同様、トーナメント大会による独特の緊張感だ。そして、先輩・藤浪の存在も影響しているという。
「藤浪はプロ1年目から、一軍で通用しました。森は『試合に出たい』との思いも人一倍強い。自分が即戦力として通用しないのなら、社会人でレベルアップをはかりたいとも思っているようです」(前出・関係者)
『打者・森』に対しては、全球団のスカウトが「将来の大砲候補」と太鼓判を押す。だが、『捕手・森』の評価は“慎重”だ。肩は強い方ではあるが、プロに入れば、「常にMAXのスピードで盗塁殺を狙っていかなければならない」というのが現時点での評価だ。
「肩が強いのは分かっています。だけど、もっと速い送球ができるようになるという伸びしろがあるのかどうか、捕手として、その部分をもう少し見極めたい…」(前出・スカウト)
某球団は「捕手以外のポジションでの適性があるのかどうか」も判断基準に加えたそうだ。つまり、捕手としての育成には2、3年を要する。しかし、打撃力だけなら「もっと早く一軍レベルになる」と見ているのだろう。
「現時点で、森は『捕手として今後の野球人生を』と考えています」(前出・関係者)
おそらく、社会人野球への興味を口にし始めたのは、捕手としての評価があまり高くないことも影響したのではないだろうか。とはいっても、『打撃力=特A』、『捕手・守備能力=A』というハイレベルでの話なのだが…。
一般論として、高校卒の捕手が1年目から一軍の公式戦で守備にいくケースはほとんどない。横浜DeNA・城もいるが、「若い捕手を欲していた」というチーム事情が幸運にも重なったからであり、例外と見るべきだろう。
1年目から試合に出られないのなら−−。「プロ野球選手になりたい」ではなく、「どんな野球人生を送るのか」を考えている。将来を約束された球児は考え方も超高校級のようである。(了/敬称略)